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香川のドルトムントがブンデス2連覇。
偉業をもたらした「信じる」気持ち。 

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ミムラユウスケ

ミムラユウスケYusuke Mimura

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photograph byAP/AFLO

posted2012/04/23 12:40

香川のドルトムントがブンデス2連覇。偉業をもたらした「信じる」気持ち。<Number Web> photograph by AP/AFLO

4月21日のボルシアMG戦、優勝を決定づける2点目を挙げ、クロップ監督と共に喜ぶ香川真司。昨季は、リーグ前半戦MVPに輝きながらも怪我によって長期離脱した香川だったが、今季は欠場わずか3試合。13得点(32節終了時点)を挙げ、文字通りエースとしての活躍を見せた。

「成功の9割は、信じる気持ちから生まれる」(ウディ・アレン/映画監督)

 ドルトムントの2連覇は、ユルゲン・クロップ監督と、若くて才能ある選手たちが築き上げた「信仰」によってもたらされた。

 彼らは、他のチームが真似できないような華麗なパスサッカーでブンデスリーガを制圧したのではない。前線からのアグレッシブな守備。攻守の素早い切り替え。闘う気持ち。ドルトムントのサッカーの特徴は、どれもシンプルなものだ。香川真司も常々語っている。決して難しいことをしているわけではない、と。

 そんな自分たちのサッカーを、どんなときも愚直なまでに信じ続けて成功を掴みとったのが、ドルトムントというチームだった。

 リーグ連覇をしたのは、過去10シーズンではドルトムントの他に、バイエルンだけだ。過去20シーズンを振り返ってもやはり、ドルトムントとバイエルン以外に成し遂げたチームはない。過去30シーズンに範囲を広げて、ようやく選手時代のフェリックス・マガト(現ヴォルフスブルク監督)らが中心となってチャンピオンズ・カップ(現在のCL)を制したハンブルガーSVの名前が出てくるくらい。クロップ監督率いるドルトムントによる連覇を、文字通り“偉業”と呼ばずして何と呼ぼうか。

前年度王者としては歴代3位の成績に沈んでいたリーグ前半戦。

 そんな今シーズンのドルトムントを象徴するターニングポイントが2つある。

 1つ目が、9月のハノーファー戦からマインツ戦にかけての時期だ。

 9月18日、リーグ第6節のハノーファーとのアウェイゲームでは、香川のシーズン初ゴールで先制したものの、残り時間3分となったところで2ゴールを叩き込まれての逆転負けを喫している。6試合を終えたその時点での成績は、2勝1分3敗の11位。勝ち点7というのは、この時期の前年度王者の成績としては歴代で下から数えて3番目だった。この時点までは、決定機を決められず、自分たちのミスから相手に失点を許す。そんな戦いが続いていた。

 普通なら、嫌な流れを断ち切るために、何かを変えようとするだろう。しかし、クロップ監督は違う。選手たちに口を酸っぱくして、語り続けたのだ。

「自分たちのサッカーをやるんだ!」

 自分たちのサッカーとはもちろん、前線からのアグレッシブな守備、攻守の素早い切り替え、闘う気持ちを前面に出すことをベースにしたものである。

【次ページ】 大きな転機となったマインツ戦のハーフタイム。

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