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「国政」という難敵を
次戦に選んだパッキアオ。
~当選ならボクシングは引退!?~ 

text by

前田衷

前田衷Makoto Maeda

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photograph byGetty Images

posted2010/04/12 06:00

下院選立候補を妻と届け出るパッキアオ。対立候補は地元の有力者でやや不利との予想も

下院選立候補を妻と届け出るパッキアオ。対立候補は地元の有力者でやや不利との予想も

 東洋人と無名のアフリカ人が米国のど真ん中テキサス州アーリントンのカウボーイズスタジアムで戦うのを見ようと、実に5万人超の大観衆が詰めかけたというから驚きである。3月13日、今や世界のスーパースターとなったマニー・パッキアオが、ガーナ人ジョシュア・クロッティ相手にワンマンショーを演じ、大差判定勝ちを飾った。

 これで俄然、宿敵フロイド・メイウェザーとの対決に期待が集まるが、フィリピンの国民的英雄の次の戦いの場はリングではない。しばらくボクシングを休んで、5月に予定される国政選挙に打って出る。何を酔狂な……などと笑ってはいけない。パッキアオの政治に対する思いは付け焼き刃ではない。4年前、友人の試合の応援のため来日した際に取材する機会があったが、そのときすでに「私の国には貧しい人々が多く、彼らを助けたい。そのためには、政治家にならなければ何もできない」と語っていたのだ。成功したチャンピオンがよく口にする夢のような話だが、パッキアオは本気だった。実際、3年前に初めて立候補した。

 当時すでにパッキアオを知らないフィリピン人は皆無に近く、試合となれば通りから人影が消え、犯罪も激減すると言われた。アロヨ大統領はじめ、パッキアオ人気にすがるこの国の政治家も数多い。知名度だけで当選してしまうどこかの国の選挙からすると、パッキアオが当選しても不思議ではないが、このときは惜しくも落選の憂き目を味わっている。

3年前の選挙では落選。国民的英雄のリベンジなるか?

 あくまでも個人的見解だが、プロボクサーはプロレスラーほどには政治家に向いていないのではないか。自己演出の巧みなレスラーには国会議員もいるし、米国では知事になった人もいる。ボクサーは口下手で演技が苦手だからというよりは、やはり向き不向きの問題だろう。現WBC世界ヘビー級王者で依然ウクライナの国民的英雄であるビタリ・クリチコは、2度にわたって首都キエフの市長選挙に立候補したが、いずれも勝てなかった。わが国にも、衆院選に立候補して落選したガッツ石松さんという例もある。

 パッキアオの再挑戦は好結果も期待されるが、そうなれば引退もあるか。昔のモハメド・アリの言に倣えば、「国会議員の代わりはいくらでもいるが、パッキアオの代わりはいない」のだが。

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