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スペイン有名誌休刊に見る、
スポーツメディアの危機。
~サッカー雑誌を襲う2つの逆風~ 

text by

豊福晋

豊福晋Shin Toyofuku

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photograph byDaisuke Nakashima

posted2011/10/24 06:00

スペイン有名誌休刊に見る、スポーツメディアの危機。~サッカー雑誌を襲う2つの逆風~<Number Web> photograph by Daisuke Nakashima

昨季発行された「ドン・バロン」。表紙からもバルサ、マドリーを公平に扱う姿勢が伝わる

 欧州を襲う不況の波は出版界にも大きな影響を及ぼしている。

 先月、スペインで36年の歴史を持つ権威あるサッカー雑誌「ドン・バロン」が休刊となり、サッカーファンを嘆かせた。「ドン・バロン」休刊の最大の理由は、スペインを襲う経済危機が引き起こした広告料の低下にある。

 ギリシャに次ぐとされる規模の景気悪化により企業は広告費を一斉に削減。「ドン・バロン」の広告収入も急降下し、経営は悪化する一方だった。編集部は今季のリーガ開幕時点までは発行を続けたが、状況が回復する兆しは見られず、9月6日、最終的に発行停止されることになった。

 広告料の低下は「ドン・バロン」だけの問題ではなく、今後は同誌に続いて休刊となるスポーツ誌も出てくるのでは、とも言われている。

スポーツ新聞の報道が公平性を欠く中、貴重だった「ドン・バロン」。

 スポーツメディアとしては、「マルカ」などのスポーツ紙は依然健在だが、スペインの新聞は地方主義の色が濃く、ひとつのクラブに肩入れした報道が多い。「マルカ」はレアル・マドリーの機関紙とも呼ばれ、常に同クラブに寄った報道をしており、一方でバルセロナ本拠の「スポルト」や「ムンド・デポルティーボ」紙はバルサ一辺倒となるなど、スポーツ報道は著しくバランスを欠いている。

 そんな中、あくまでも中立的な立場を貫き、ビッグクラブだけに限らず様々な角度からスペインサッカーを伝えていた「ドン・バロン」は貴重な存在だった。

 スポーツ雑誌が苦しんでいるのは、スペインだけではない。

 同じく経済危機に苦しむイタリアでは昨年、1912年創刊のスポーツ週刊誌「グエリン・スポルティーボ」が月刊化への移行を強いられた。月刊化によりコストを削減し経営のスリム化を図ったものの、苦しい状況は変わっていない。

 雑誌が苦しんでいるのは、欧州の若い読者が電子メディアを好むからでもある。

 インターネットはもちろんのこと、紙ではなくiPadで新聞を定期購読する若者が急増。同じ新聞でも、電子版の値段は紙の新聞の約3分の1だ。

 伝統あるスポーツ雑誌が売店から消えるのは、サッカーファンにとっては悲しいことではあるが、このまま不景気が続けば、価格の面などからも電子メディアの人気が加速していくのかもしれない。

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