球道雑記BACK NUMBER
外角低めのストレートを、もっと!
平野佳寿と鈴木郁洋の“頑固力”。
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2011/10/11 10:30
9月下旬には、日本ハムの武田久が持っていたパ・リーグの年間最多HPの記録を塗り替えた平野。オリックスのシーズン終盤の伸びでも、平野の貢献は大きい
「あいつは12球団イチのピッチャーですよ!」
この試合で平野が投げた球数は敬遠のボールを含め14球だったが、1つのヒットも打たれることなくサヨナラ負けを喫することとなった。
試合後、なぜ頑なまでに外角低めの直球を要求し続けたのか、鈴木に聞いた。
「疲れもあっただろうし、67試合も投げていれば気持ちは向かっていても体が言うことを聞いてくれない、そんなときだってありますよ」
満身創痍の体ながらも必死に気持ちを奮い立たせて投げている平野を、鈴木は懸命にかばい続けた。
「あいつの1番のボールは外角低めの直球です。間に遊びを入れる必要なんてないんです。あいつは12球団イチのピッチャーですよ! いつものようなボールが来れば誰にだって打たれる心配なんてないんです!」
鈴木は怒りと悔しさを噛み殺した表情のまま、そう叫んだ。
そこで、4年前に平野にインタビューしたときの言葉を思い出した。
「僕は“平野”という新しいブランドを出していきたいんです」
平野と鈴木、二人の間にあったのは信頼で結びついた“頑固力”。それは、まごうこと無き一流の“ブランド”だった。