全50球中43球。
オリックス・鈴木郁洋はミットを頑としてそこから動かすことはなかった。
彼が要求したのは外角低目へのストレート。
マウンドにいた平野佳寿はめいっぱい、そのミットめがけて投げ込んだ。
10月4日から西武ドームで行われた埼玉西武対オリックス3連戦は両チームにとってCS進出生き残りをかけた最後の天王山と呼べる試合となった。リードするオリックス、それを追いかける西武。ペナントレースと同様の展開になった初戦は、さながら両チーム、両監督の我慢比べという様相になった。オリックス・岡田彰布監督のいう“頑固力”が勝つのか、埼玉西武・渡辺久信監督のいう“寛容力”が勝つのかという、実に興味深い戦いとなったのだ。
初戦の終盤、この3連戦の鍵を握る場面が訪れた。
それが冒頭の部分だ。
5対1となってオリックスが4点リードで迎えた7回裏1死一、三塁の場面を迎えた岡田監督は今季66試合目の登板となる平野佳寿をマウンドへ送った。
CS争いの行方を左右する重要な場面、岡田監督はなんの迷いもなく平野にそれを託したのだ。
外角低めのストレート。全50球のうち43球。
平野への信頼はキャッチャー鈴木郁洋のリードからも見てとれた。
初球、栗山巧に投じたボールは鈴木の構えた外角低めとは逆球の内角高めへと抜けていったが、その後も鈴木は外角低めのストレートばかりを平野に要求した。相手のデータは関係なかった。
平野に対するこの絶対的な信頼こそが今季のオリックスを支えた大きな柱だった。初球、平野の球速は147キロを表示した。栗山はこれを強振するもボールは鈴木のミットの中へ吸い込まれる。
「気持ちが乗っている」
鈴木はこのボールを受けてそう感じたという。
その後も鈴木はこの外角低めのストレートにこだわり全50球中43球、それを要求した。まるで岡田が提唱する“頑固力”が乗り移ったかのような彼の配球。
「自分はピッチャーの一番良いボールを要求したに過ぎないです。外角低めはバッターが一番打ちづらいボールでもありますし、それはキャンプから徹底してやってきたことですから……」
さも当然であるかのように鈴木は語った。それに応え、渾身のボールを投げ続けた平野。
この試合、オリックスは西武の追撃を振り切ることに成功した。
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