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<F1鈴鹿伝説> アラン・プロスト 「アイルトンは僕の生涯に、誰よりも大きな刻印を残した」
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byAFLO
posted2011/10/07 06:00
“盟友”の心の内に今も生き続ける真実のセナ像とは――。
没後10年が経った'04年3月、仏誌『レキップ・マガジン』に
掲載された、貴重なインタビューをここに抄録する。
没後10年が経った'04年3月、仏誌『レキップ・マガジン』に
掲載された、貴重なインタビューをここに抄録する。
「僕らは何年もバトルを繰り広げてきた。厳しい戦いだったが、好敵手として互いに相手を認めあっていた。アイルトンは、純粋にスポーツの観点から見たとき、僕が尊敬するただひとりのドライバーだ。僕らはどちらが欠けていても、キャリアと人生の持つ意味が、まったく違ったものになっていただろう」
1994年5月5日、サンパウロで行なわれたアイルトン・セナの告別式で、アラン・プロストはそうコメントした。だが、以降プロストは、セナに関して公の場で語ることはほとんどなかった。
それから10年。プロストは意を決して口を開いた。時を経なければ、咀嚼できないことがある。語れないことがある。長い沈黙の後に、最大の好敵手が明かしたセナの実像とは。
――セナとの最初の出会いはいつですか?
「'84年のニュルブルクリンクだ。メルセデスがエキシビションレースを開催し、F1ドライバー全員を招待した。ちょっと内気でよそよそしく、大人しい若者という印象だった。だが、アイルトンのような人間の輪郭を、わずか1日で理解することなどできないよ」
――では当時の彼をどう見ていましたか。危険なドライバーという評価も、一部でありましたが。
「予選はとにかく速かった。僕はレース時の彼を危険とは思わなかったが、彼自身はときおり孤独を感じているようだった。権威への欲求はすでに強く、能力は水準をはるかに超えているという自負が彼にはあった」