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バンクーバー五輪、最終日の風景。
爆発的賑わいと、忘れ得ぬ選手たち。 

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byGetty Images

posted2010/03/02 00:00

バンクーバー五輪、最終日の風景。爆発的賑わいと、忘れ得ぬ選手たち。<Number Web> photograph by Getty Images

バンクーバー五輪、最終日の風景。爆発的賑わいと、忘れ得ぬ選手たち。

 街が爆発した。

 一瞬、そんな風に思えた。

 最後の競技となったアイスホッケー決勝は、カナダvs.アメリカの対戦。アイスホッケーはカナダの国技である。アメリカには1次リーグで敗れている。

 試合は、ダウンタウンの通りに設置されたモニターで観ていた。

 2-1からアメリカが追いつき、延長にもつれこむ。決着がついたのは、延長7分40秒。カナダの英雄グレツキーの後継者と呼ばれているエースのクロスビーが得点。選手たちは観客席とリンクを隔てるボードを壊さんとばかりに一角に押し寄せ、抱き合う。

 その瞬間、あたりの光景が一変した。老若男女が手にした国旗を振り、奇声が上がる。

 あちこちからダウンタウンの中心部を目指し、人々が続々と押し寄せる。国歌の合唱、柱によじのぼる女性、誰彼かまわず抱き合い、ハイタッチを繰り返す。行きかう車、公共バスでさえ、クラクションを鳴らす。

 もはや歩くことは困難だった。

「カナダの人は、ほんとうにカナダが好きなんですよ」

 大会期間中、金メダルが出れば街に繰り出して明け方まで騒ぎ、成績が悪ければ静まる。カナダの人々はシンプルに喜びや悲しみを表現してきたが、今日ほどの光景はなかった。そして、ここ何回かの夏冬のオリンピックで、ここまで開催都市の人々が盛り上がったこともなかった。

 バンクーバーへの留学経験がある知人の言葉を思い出した。

「カナダの人は、ほんとうにカナダが好きなんですよ」

 ときに酔いがすぎての喧嘩も見たし、逮捕される男も何人もいた。街の少し外れでは、活動家が「オリンピック・テント村」を開いて多くのホームレスを住まわせていたり、多額の費用をかけた五輪開催に抗議活動を行なっている人たちも目にした。光が作る、影の部分である。

 それでも最終日、期間中最大の騒ぎの中、大会は終わろうとしている。

カナダのメディアは日本同様に選手の家族を報道していた。

 思わぬ発見だったのは、選手の家族を大々的にクローズアップするカナダのメディアの姿勢だった。

 テレビ中継を観ていると、会場に応援にかけつけた家族を、名前のテロップ入りで必ず取り上げ、試合の最中あるいは直後の表情も映し出していた。カナダの選手の家族だけではない。海外の有力選手の家族もだ。

「よくここまで選手の家族が観客席のどこにいるか、把握しているな」と驚くくらいに。

 最初の金メダルとなったアレキサンダー・ビロドーが象徴的だった。脳性麻痺の兄とのストーリーは何度も何度も取り上げられた。兄も含めて家族がスタジオに呼ばれもした。家族をクローズアップするのは日本の報道の特徴とばかりと思っていたから意外だったし、新鮮な発見でもあった。

<次ページに続く>

► 【次ページ】  浅田には4年後への課題がハッキリ見えた。

 

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