SCORE CARDBACK NUMBER

世界ヘビー級にそびえ立つ、
クリチコ兄弟という巨峰。
~WBAなど主要団体の王座を独占~ 

text by

前田衷

前田衷Makoto Maeda

PROFILE

photograph byGetty Images

posted2011/08/01 06:00

世界ヘビー級にそびえ立つ、クリチコ兄弟という巨峰。~WBAなど主要団体の王座を独占~<Number Web> photograph by Getty Images

 K2――と言ってもヒマラヤの高峰の話ではない、ウクライナ出身の巨人兄弟、ビタリ&ウラジミール・クリチコが設立したプロモーション会社の名前である。クリチコが2人でK2。オスカー・デラホーヤ以来、スーパー王者が自分の試合を実質プロモートして効率よく金を回収しようとするのが流行りだが、今、最も有卦に入っているのがこのK2プロモーションなのだ。

 7月2日、5万もの観衆で埋まったハンブルクのサッカー場で行なわれた世界ヘビー級王座統一戦では、弟のウラジミールが英国の希望デビッド・ヘイに大差判定勝ちし、ヘイのWBA王座を吸収。これでWBC王者の兄ビタリとともに世界の主要4団体のヘビー級王座をすべて兄弟で独占することになった。

 クリチコ兄弟は、今や世界にそびえ立つツインピークス。兄ビタリは203cm、111kg、弟ウラジミールは198cm、110kg。近年巨人化が進むヘビー級のなかでも2人は群を抜く。サイズは兄弟の一番のアドバンテージだが、彼らが他の巨人選手と異なるのは、常に冷静沈着、頭の回転が速く、この階級にしては動きが機敏なこと。相手に打たせないボクシングができるのが強みだ。213cmの巨人ワルーエフを攻略して王座に就いた頭脳的なヘイでも、ウラジミールに最後まで右の決定打が届かなかった。

ヘビー級タイトルが米国人の手に戻るのはいつになるのか。

 ヘビー級と言えば、ソ連崩壊後、旧社会主義国のエリート・アマが出てくるまでは、米国の独擅場だった。世界ヘビー級王座が大西洋を越えて欧州選手の手に渡ることは滅多になかったが、米国に新鮮で魅力的なヘビー級が不在の今、逆にタイトルが米国人の手に戻るのはいつになることやら見当がつかない。

 ウラジミール35歳、ビタリは40歳だが、明らかな衰えはうかがえず、兄弟のヘビー級支配は当分続きそうな気配だ。今後それぞれが年2度ペースでリングに上がれば、50歳でも王座に居座れるのではないかという声さえある。

 K2プロモーションの今一番の心配は、高額収入を当てにできる相手がいないこと。「パッキアオとやるしかないか」とウラジミールは冗談を言い、あり得ない話だが兄弟の対戦も酒肴に上る。パワーは兄、技術では五輪金メダルの弟が上と言われたが、今では甲乙つけがたい。

■関連コラム► 46歳で王者に返り咲いたホプキンスの「超規格外」。~フォアマンの記録を大幅更新~
► ヘビー級を活性化させる米国復活の日は遠い。(08/12/04)

関連キーワード
ビタリ・クリチコ
ウラジミール・クリチコ

ページトップ