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復興のために集結した
レジェンドたちの競演。
~釜石V7戦士が見せた“匠の技”~ 

text by

大友信彦

大友信彦Nobuhiko Otomo

PROFILE

photograph byNobuhiko Otomo

posted2011/07/25 06:00

27年ぶりに釜石のジャージーを着た松尾は自らの活躍ぶりに、「自分でも驚いちゃったよ」

27年ぶりに釜石のジャージーを着た松尾は自らの活躍ぶりに、「自分でも驚いちゃったよ」

 最高気温37度に達した7月9日の太田市陸上競技場。フライパンと化したピッチで、厚手の木綿ジャージーを着たオジサンたちが、笑みをうかべてボールを追っていた。

 赤いジャージーの集団は松尾雄治、石山次郎、谷藤尚之、千田美智仁……かつて日本選手権V7を飾った新日鐵釜石の英雄たち。迎え撃つは宮地克実、鏡保幸、ノフォムリ・タウモエフォラウら『不屈の挑戦者』三洋電機の戦士たちだ。この日は三洋電機からチーム名を変更したパナソニックのラグビー祭。例年なら無料イベントだが、今年は震災被災地支援のため、あえて有料試合で実施。そして伝説の勇者たちは、1500円の入場料を「安い」と思わせるプレーを連発した。

 現役によるパナソニック×神戸製鋼のオープン戦に先立ち行なわれた三洋釜石OB戦。釜石OBは開始2分、SO松尾が絶妙の間合いで放ったパスからFB谷藤が60mを走りきったのを号令に、伝説の『13人つなぎトライ』を思わせる流麗かつスリリングなアタックを次々と披露。無闇に当たらない。ボールが止まらない。炎暑の中を中年オヤジが走る走る……。

「今日はいままでで一番、ラグビーやっててよかった」(松尾雄治)

「釜石って、遊びができないチームなんですね、結局本気になっちゃう」

 汗を拭って松尾は笑う。20分×3本の試合は、53対38で釜石OBが勝ったが、周りの反応も面白かった。スタンドからもベンチからも、日陰で眺めていた現役選手からも「うまい!」という嘆息が何度もあがった。長い間、表舞台に出ることのなかった伝説の英雄たちは、無形文化財と呼びたくなる匠の技を、今も錆び付かせず持ち続けていたのだ。

 釜石と三洋はV7時代に決勝で2度戦った好敵手。その後もOB戦を組んで交流してきたが、今回の釜石OBは歴代最も豪華な陣容だった。何しろ、釜石ラグビーの復興支援に立ち上がった『スクラム釜石』の松尾キャプテンと石山代表はともに赤いはまゆりのジャージーを「引退以来初めて着た」というほどなのだ。

「それも、三洋の仲間がこうして呼んでくれたから。今日はいままでで一番、ラグビーやっててよかったと思ってます。宮地さんも生きてたし(笑)」(松尾)

 震災を機に立ち上がった英雄たちは、「また集合しよう」と口々に誓っていた。

 次に相手を買って出るチームはどこ?

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