甲子園の風BACK NUMBER
充実の九州・沖縄地区で躍動する、
「超高校級」の逸材たち。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2011/07/20 10:30
九州国際大付(福岡)の捕手・高城俊人。春の選抜大会決勝では東海大相模に1-6で敗れたが、大会打率.632の数字を残した打撃力に加え、超高校級の強肩を誇る
宮崎出身の選手は人間的な「良さ」がマイナスに?
この武田の自他ともに認めるライバルが吉田。同じく150キロ級のストレートを持ちながら、最もいいところはバランスのよさ。理想に近い投球フォーム、変化球のキレやコントロール、そういう総合力で打者を圧倒するところは武田と共通する。
スカウトに武田の印象を聞くと、「文句ない」と言った後で、「でも宮崎ですから」と言う。どういうことかと言うと、生きていく上で美点となる人間的な「良さ」が、プロ野球界で生きていく上ではマイナスになると言うのだ。
「宮崎2割減、沖縄3割減、とスカウトは言ってるんです」と笑いながら教えてくれた。「寺原(隼人)、新垣渚……ねっ?」とスカウト氏は笑った。しかし、そんなオカルト的なマイナス要素しかないというのが逆に凄い。今年の宮崎勢は本当に楽しみが多い。
九州で忘れてはならないのが、選抜大会準優勝の九州国際大付(福岡)だ。東海大相模と争った決勝までの5試合で打率.323、本塁打6、打点24と猛打の印象を強烈に残した。とくに飛び抜けているのが高城俊人の打率.632。8打席連続安打の大会タイ記録を残し、大会ナンバーワン捕手の名をほしいままにした。
MAX149キロを誇る北方悠誠(佐賀・唐津商)もスカウト垂涎の的。
ディフェンス面では強肩に注目した。
実は1、2回戦の高城は、投球練習最後に行うイニング間の二塁送球で手を抜いていた。プロでは日常的に見られる風景だが、高校球児では珍しい。それが準々決勝の北海戦で1.92秒を記録、さらに実戦では2.01秒という速いタイムを記録したのだ。ちなみに、私は強肩の目安をイニング間で2秒未満、実戦では2.05秒未満くらいに置いている。高城の肩が超高校級と言っても過言ではないことがわかる。
この高城をはじめ、エースの三好匠、さらに下級生ながらチームの核になっている龍幸之介(外野手)、花田駿(一塁手)などの逸材が控え、この夏も目が離せない。
九州地区の他県に目を移せば、佐賀にはMAX149キロを誇る北方悠誠(唐津商)がスカウト垂涎の的。武田にくらべると左肩の開き、腕の振りの柔らかさなどの部分で遅れをとっているが、体幹の強さを生かしたストレートの迫力では負けていない。
ストレートだけではない。北陵戦ではフォークボールかチェンジアップか、打者の近くで急激にブレーキがかかったあとに落ち込む変化球のキレが光った。この試合、1、2、5回に3三振、8、9回に2三振を奪い、その他のイニングでは1個しか三振を取っていない。マウンド上の態度は、「狙ったときには必ず三振を取れる」と言いたげで、どこか偉そうに見えた。そういう要素は大切だと思う。これは武田にはない長所だ。