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サンプドリア、18年ぶりの復活。
~キーマンはあの悪童カッサーノ~ 

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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posted2009/10/18 08:00

サンプドリア、18年ぶりの復活。~キーマンはあの悪童カッサーノ~<Number Web> photograph by Getty Images

イタリア国内では、「カッサーノを代表に呼ぶべきだ」という声が高まっている

 北のビッグ3とローマの2クラブ以外で、最後にスクデットを勝ち獲ったクラブはどこか?

 答えは18年前のサンプドリアにまで遡る。ヴィアリとマンチーニというアイドルFWコンビを擁したチームは、実力伯仲の1990-1991シーズンを制し、「サンプ・ドーロ(黄金のサンプ)」と称えられた。その古豪が今季開幕4連勝。秋の椿事かと思いきや、7節まで首位を堅持している。霧濃い海運都市の本拠地ジェノバに、イタリア中から熱い視線が集まり始めた。

「人生は金じゃない」と悟ったカッサーノのチームプレー。

 快進撃の中心にいるのは、かつて悪童として名を馳せた“あの”カッサーノだ。ローマ、レアル・マドリーと出世街道を歩んだはずの天才FWは、堕落した末に挫折の道を辿った。カッサーノは、9月下旬の伊紙『ガゼッタ・デロ・スポルト』紙上インタビューでこう独白している。

「田舎のガキがちやほやされて舞い上がったんだ。人生を幸せにしてくれるのは結局、金じゃないんだよ。サンプに来てから、初めて人を信じられるようになった」

 07年夏、移籍と同時にサンプ監督に就任したのはマッザーリ(現ナポリ)だった。レッジーナ時代に中村俊輔を重用した指揮官によって、全幅の信頼を与えられたこのファンタジスタは少しずつ再生への道を歩んでいった。

 3年目の今季、開幕のカターニャ戦でカッサーノがボールを持つたびに「マジア(魔法だ)!」という驚嘆の声がスタンドのあちこちから上がった。卓越した戦術眼、変幻自在のテクニック。華麗な多重アタックを創造する彼の足元には、見る者を虜にするファンタジーが詰まっていた。だが何より深い印象を残したのは、周囲を生かすチームプレーに徹していた点だった。

悪童を改心させた“デル・ネーリ爺さん”の卓越した指揮。

 試合を重ねるごとに献身的なプレイヤーへの変貌が明らかになり、カルチョ界の御意見番サッキも「コーラスとともに唄うことを覚えた」と手放しで称賛した。鮮烈なセリエAデビューから10年、サッカー界の酸いも甘いもかみ分けたカッサーノは、人間的に成熟し、真のチームリーダーとなりつつある。その復活劇は、まるで悪童が改心し成長する寓話『ピノッキオ』そのものだ。

「とすると、ゼペット爺さんはわしかな」

 そうとぼける現監督デル・ネーリは好々爺然としながら、かつて弱者がいかに強者を破りうるかを“ミラクル・キエーボ”で鮮明に実証した。“デル・ネーリ爺さん”が作り上げた「4-4-2」は“守備よりもまず攻撃ありき”。6年前に柳沢敦がプレーした当時の受身型サンプドリアとはそこがちがう。ウイングのマンニーニとパダリーノが両サイドをえぐり、FWパッツィーニがスペースを作って、カッサーノが突く。つねに先手を仕掛け、主導権は譲らない。実質「4-2-4」で攻めるシンクロ・アタックは、セリエAでは異端中の異端だが、それだけに新鮮な印象を与え、試合はスペクタクルで満ちあふれている。

 ところが、6節の大一番インテル戦ではそのスタイルをかなぐり捨て、あえて相手有利のパワープレー勝負を受けて立ち、見事競り勝った。華麗さに固執せず、勝負どころを見極めた戦いぶりに「この強さは本物」と他クラブのファンまで唸った。

<次ページに続く>

► 【次ページ】  復活に懸ける選手たちの意地がダークホースの原動力だ。

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