湘南ベルマーレ“平成の臥薪嘗胆”。
「生きるか死ぬかの500試合」

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text by Kei Totsuka

photograph by NIKKAN SPORTS

湘南ベルマーレ“平成の臥薪嘗胆”。「生きるか死ぬかの500試合」

関連アスリート・チーム:

チーム・選手名
反町康治
田原 豊
阿部 吉朗
坂本 紘司
田村 雄三
湘南ベルマーレ

 早く、早く。まだか、おいっ! 

 ベンチにいるスタッフと控え選手はもちろん、ベンチサイドのチーム関係者も、両手を拡げて試合終了をアピールする。湘南ベルマーレの11年ぶりのJ1昇格は、ついにカウントダウンへ突入していた。

 死地からの力強い生還だった。

 ホームの水戸ホーリーホックに20分と21分に立て続けに失点を喫し、あっという間に点差を拡げられてしまう。同時刻に開催されていた4位のヴァンフォーレ甲府対ロアッソ熊本戦は、同じ2-0のスコアで甲府がリードしていた。このままでは、勝ち点1差で甲府にJ1昇格の権利を譲ってしまう。

 1ボランチの田村雄三が、DFに声をかける。

「下を向くなっ! 3点目を絶対にやらないようにすれば、必ず前の選手たちが点を取ってくれるから」

 チームのシンボルである坂本紘司が、湘南らしさを体現していく。ルーズボールに激しく詰め寄り、マイボールになった瞬間にスペースへ飛び出す。「今年のウチのいいところは、最後まで足を止めずにやりきるところ。0-2になっても、諦めている選手はひとりもいなかった」

最後の試合で2点ビハインド……甲府が逆転のJ1昇格を決める!?

 30分に田原豊が追撃弾を蹴り込むと、4分後には阿部吉朗がヘディングシュートを突き刺し同点。失っていた主導権を強引に引き戻すが、ホームの水戸もしぶとい。

 バーとポストに救われた。

 奇跡的なクリアがあった。

 そして53分、阿部が自身2点目となるヘディングシュートをねじ込み、ついに3-2と逆転。甲府は依然としてリードしていたが、昇格の権利は再び湘南の手元に返ってきた。

 およそ4分間のロスタイムは、結果的に素晴らしい演出効果をもたらした。冬の寒さが漂うスタジアムに、待ち望んだホイッスルが響く。

 うっすらと照明に照らされたピッチに、爆発的な歓喜が駆けめぐっていた。

 溢れ出る思いにスタッフと選手たちが身を委ねているなかで、反町康治監督は小走りに水戸のベンチへ駆け寄っていく。木山隆之監督に右手を差し出した。肩を叩いて年下の監督を労う。試合後に決して欠かすことのなかったルーティーンである。

<次ページに続く>

► 【次ページ】  「就任1年目でのJ1昇格は、決して偶然じゃない」

(更新日:2009年12月10日)

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筆者プロフィール

戸塚啓

戸塚啓

1968年生まれ。'91年から'98年まで『サッカーダイジェスト』編集部に所属。'98年秋よりフリーに。2000年3月より、日本代表の国際Aマッチを173試合連続で取材中('10年4月現在)。近著に『世界に一つだけの日本サッカー』(出版芸術社)、『新・サッカー戦術論 対角線上のレフティに注目せよ!』(成美堂出版)がある。


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