MLB Column from USABACK NUMBER

レッドソックスが仕掛けた
幻の大型トレード。 

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李啓充

李啓充Kaechoong Lee

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photograph byGetty Images

posted2009/08/12 11:30

レッドソックスが仕掛けた幻の大型トレード。<Number Web> photograph by Getty Images

ベネズエラ出身のヘルナンデスは、'05年に19歳の若さでメジャーデビューを果たしている。今年のWBCでも母国のエースとして活躍した

 今季も、トレード期限直前に、大物選手の移籍が相次いだ。特に、マット・ホリデー(アスレチクス→カーディナルス)、クリフ・リー(インディアンズ→フィリーズ)、ビクター・マルティネス(インディアンズ→レッドソックス)、ジェイク・ピービー(パドレス→ホワイトソックス)のトレードは、ペナントレースの帰結に大きな影響を与えると考えられている。

MLBの勢力図を塗り替えるはずだった「幻の大型トレード」。

 しかし、MLBの戦力バランスに与える「長期的」影響という観点から考えたとき、これら4つよりもはるかに重要なトレードは、レッドソックスがしかけた「幻の大型トレード」だったと言ってよいだろう。

「幻の大型トレード」、最大の眼目は、マリナーズの若きエース、フェリックス・ヘルナンデス(23歳)を、レッドソックスに移籍させることだった。今季12勝4敗・防御率2.78(数字は8月6日現在)と絶好調のヘルナンデス。もしレッドソックスに移籍していた場合、ジョシュ・ベケット、ジョン・レスターとともに、強力先発トリオ結成が実現していただけに、レッドソックスにとっては「黄金時代」到来も可能となるトレードになるはずだった。

拭いきれないヘルナンデス放出の可能性。

 もっとも、マリナーズ・ファンにしてみれば、「まだこれからの若いエースを放出するなんて、そんな馬鹿な!」と言いたくなるところだろう。しかし、マリナーズには「絶対に放出しない」とは言い切れないチーム事情があるので説明しよう。

 まず、第一の理由は、ヘルナンデスの契約問題である。2011年のシーズン終了後にFA資格を取得するヘルナンデス。マリナーズは、これまで、多年契約を結ぶことでFA資格取得後もヘルナンデスを保有できるよう懸命の努力を続けてきた。しかし、いまだに条件面で折り合うことができず、2年後にFAとなって逃げられてしまう可能性が消えていないのである。

 仮にヘルナンデスがFAとなった場合、ヤンキース、レッドソックスの金満球団を相手に「競り」勝てる可能性ははっきり言って低い。一方、ヘルナンデスにしてみれば、ひとたびFAとなった暁には、C・C・サバシアの期間7年・総額1億6100万ドルの記録を更新、投手としての史上最高額契約を結ぶことも夢ではない。「FAになって逃げられてしまうのなら、高く売れる間に売った方がいい」と、今後2年の間にマリナーズが放出を決断したとしても一向に不思議はないのである。

 ヘルナンデス放出があり得る第二の理由は、マリナーズのファームに有望選手が乏しいことにある。たとえば、7月31日に発表されたばかりのMLB.com 「有望選手上位50人」のリストに、マリナーズ傘下のマイナーリーグ選手は一人も含まれていない。将来に向けたチーム作りを考えた場合、有望選手を外から獲得せざるを得ない状況となっているのである。

<次ページに続く>

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