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12球団ドラフト採点
<パ・リーグ編> 

text by

小関順二

小関順二Junji Koseki

PROFILE

posted2008/11/07 00:00

<パ・リーグ編>

◇西武ライオンズ65点

 野手は多くの主力が成長途上とあって緊急の補強を要さない。ブラゼルの退団によって中村剛也(三塁手)の一塁コンバート、中島裕之(遊撃手)の三塁コンバートがクローズアップされているが、3〜4年後に3位・浅村栄斗(大阪桐蔭・遊撃手)が一軍に定着したらそのときに考えてみようか、というくらいの考えではないか。今の西武野手陣にとって、浅村の3位という指名順位はその程度の重さである。

 反対に、投手は質・量ともに不足している。その割に悠長な指名をしたなというのが今ドラフトの印象である。1位・中崎雄太(日南学園)は“工藤(公康) 2世”と言ってもいいボールの角度と直・曲球の威力があるが、新人年に初勝利を挙げ、4年目に8勝した工藤のような早熟さは感じられない。2位の野上亮磨(日産自動車)は指名順位が1つ高いというのが偽らざる思い。社会人の割に体作りが発展途上というのが低い評価の理由である。

◇オリックスバファローズ70点

 過去10年間、シーズン10勝以上挙げた投手は11人いるが、その中に高校卒選手(移籍選手は含まない)は99年の星野伸之ただ1人。これほど高校卒選手が育たない伝統(土壌)がありながら1位指名したのだから、オリックススカウト陣は甲斐拓哉(東海大三・投手)の素質によほど惚れ込んだのだろう。

 ストレートの速さ、投球フォームのよさに文句をつける要素はない。しかし、中学時代に日本一に輝き、全国の有力校から引く手あまただったにも関わらず、「地元でやりたい」と言って長野県茅野市の東海大三を進学先に選んだことには少なからず違和感がある。投手という“絶対権力者”なら有力校のエースとして甲子園大会に出場してテレビや新聞に取り上げられたい、くらいの欲望は持ってほしい。そういう常識人的な甲斐が高校卒選手の育ちにくいオリックスで頭角を現していけるのか注目していきたい。社会人時代(三菱重工神戸)のスピードに技巧が加わった5位・西川雅人(四国九州IL/愛媛・投手)の変貌ぶりも楽しみである。

◇日本ハムファイターズ90点

 中日とともに最高点をつけたのは弱体の捕手陣に手をつけたからだ。高橋信二は捕手というより一塁手。ディフェンスに定評のある鶴岡慎也はバッティングが弱い。その他にはコーチ兼任の中嶋聡しか一軍クラスの捕手がいないというのが日本ハムである。右打者で10本以上のホームランがないのは12球団でヤクルトと日本ハムだけという長打力不足。自慢の投手陣もダルビッシュ有を除けば安定感がない。しかし、そこは後回しにしてもまずは捕手をしっかりしたい、と目的をしっかり持ってドラフトに臨み、アマチュアナンバーワン捕手の大野奨太(東洋大)を1位指名したのは評価できる。

 秋前に雑誌「アマチュア野球」で取材したとき、1年先輩・大場翔太(ソフトバンク)のストレートを「見せ球程度で使うくらいで、勝負球には持ってこれなかった」と明言した。実際、2年前の大場を見たとき、それまでのストレート主体のピッチングから変化球主体のピッチングにシフトし、連勝街道をばく進した。その陰には1年後輩の大野の貢献があったのである。この大野と2位・榊原諒(関西国際大・投手)を獲得したことによって弱点は確実に補強されたと思う。中田翔、陽仲壽の成長も見込め、日本ハムの来季以降は本当に楽しみになってきた。

◇ロッテマリーンズ75点

 FA権を取得した清水直行、小野晋吾、サブロー、橋本将の去就が定まらず、来季の戦力を予想することは難しいが、投手なら左腕とリリーフ陣の質・量不足、野手なら外野陣の層の薄さがロッテの課題だろう。それを一挙に解決してやろうという意気込みが見えた。

 1位・木村雄太(東京ガス)、4位・坪井俊樹(筑波大)は技巧に特徴のある実戦型の大型左腕投手、3位・上野大樹(東洋大)は大学4年で開花した遅咲きの本格派右腕で、秋は2試合にリリーフして自責点0に抑え、リリーフ投手の素質をわずかだが垣間見せた。そして2位の長野久義(Honda・外野手)は社会人屈指の勝負強いバッティングと超一級の脚力と外野手としての強肩を有し、巨人の影(長野が入団を熱望していた)がなければ2、3球団が1位で競合したのではないかと言われる大型選手である。彼らを一挙に獲得しようとした野心は非常にプロっぽく評価できる。

◇楽天イーグルス55点

 阪神より少しだけ高く評価したが、うまい指名だとは思わない。05年からスタートした若い球団なら、ドラフト1位は将来のエース候補かクリーンアップ候補を狙ってほしかった。1位・藤原紘通(NTT西日本)はMAX148キロと紹介されることが多いが、スピードよりスリークォーターから緩急を操る技巧的投球に特徴があり、将来のエース候補というより、新人年から5、6番手で投げる実戦型左腕と言ったほうがいい。3位・井坂亮平(住友金属鹿島・投手)は昨年8月に右ヒジ手術を受け、今年が術後1年のリハビリ組。社会人時代の影が薄いのも気に入らない。5位・楠城祐介(パナソニック・外野手)は今年の都市対抗初戦のヤマハ戦を見たときは9番・レフトを打って3打数0安打(8回裏に代打を出される)だった。直近の大舞台でこの程度の成績は相当物足りない。2位の中川大志(桜丘・外野手)は力自慢タイプで、粗っぽさは天下一品。合理的なバッティングを手に入れるまでには相当な歳月を必要とするタイプ。これらが楽天のドラフトを低く評価した理由である。

◇ソフトバンクホークス80点

 1位指名で大田泰示を巨人と競合し、抽選で負けたが、外れ1位で巽慎悟(近大・投手)を指名できてかえってよかったと思う。ソフトバンクには松田宣浩、江川智晃という未完の大器がいて、ポジションはいずれも三塁が主体。ここに大田が入っても同類が増えるだけで指揮官は悩みを増幅するだけである。巽は変則的な投球フォームには相当違和感があるが、手元で伸びる140キロ台後半のストレートと、真縦に落ち込んでくるスライダーの威力はアマチュア屈指と表現してもいい。

 2位の立岡宗一郎(鎮西・外野手)は「一言で言えばスーパーマン。1番打者として強打を連発し、チームが攻撃のときにはブルペンで肩を作り、脚力も一級品」とはドラフト会議の生中継で話したことだ。これに3位・近田怜王(報徳学園)、4位・有馬翔(日南学園)という超高校級左腕投手を中位で指名し、下位では5位・攝津正(JR東日本東北・投手)、6位・金無英(四国九州IL/福岡・投手)を指名。80点より高い評価を与えてもいいと思った。

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