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240万円の新人王候補。
山口鉄也の成り上がり。 

text by

永谷脩

永谷脩Osamu Nagatani

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photograph byHideki Sugiyama

posted2008/11/06 00:00

240万円の新人王候補。山口鉄也の成り上がり。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

 チームの勝利に不可欠なのは、7、8回をキッチリ抑え切れるセットアッパーの存在、と言われる近代野球。今季前半に阪神タイガースが快進撃を見せたのも久保田智之、ウィリアムスの活躍があってこそだった。ひとりでは長いシーズンを乗り切るのは難しいが、ふたりとなれば話は別だ。しかも、左腕、右腕がそれぞれひとりいれば、鬼に金棒である。

 今季の巨人の逆転劇はまさしく右腕と左腕の若手セットアッパー越智大祐、山口鉄也が支えたと言っても過言ではない。特に山口の急成長は、尾花高夫投手コーチと取り組んだ賜物である。

 尾花コーチの持論は「左のセットアッパーが二桁勝利を挙げれば優勝できる」というものだ。'99年に福岡ダイエーホークス(現・福岡ソフトバンクホークス)が優勝したときにも14勝を挙げた左腕・篠原貴行の存在があった。巨人でも左の中継ぎを何とか育てたいと白羽の矢を立てたのが、'07年に32試合に登板、2勝を挙げた山口だった。

 巨人の中継ぎ候補には、西村健太朗(ドラフト2位)野間口貴彦(ドラフト自由枠)福田聡志(ドラフト希望枠)らのドラフト上位で入団した選手たちがいたが、山口だけが左腕であった。また育成選手出身で、コツコツとトレーニングルームで練習をしていた生真面目さを買われて、抜擢されたのだ。

 尾花コーチと共にフォーム改造に取り組んだ今季の春季キャンプでは、軸足にタメを作ることを意識して投げ込みを行った。その結果、相手打者から球の出所が見にくいと言われるフォームに変貌を遂げたのである。

 横浜商高を卒業後、アリゾナ・ダイヤモンドバックス傘下のルーキーリーグを経て、育成選手として'06年に巨人に入団。入団1年目の年俸240万円の暮らしを支えたのは「ルーキーリーグのときに憶えたハングリーさ」と言う山口。強打者相手に内角を攻める度胸のよさに加えて、140km後半の直球と切れのあるスライダーは、今やクローザーのクルーン以上の信頼を得ている。

 越智と共に生え抜きの選手が支えた今季の優勝。阪神逆転の原動力は、FA補強の結果ではなく、若手選手の成長によるものなのである。

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