ユーロビートが大音量で流れ、大観衆が見守っているスーパーGTのレース会場。市販車を改造したモンスターマシンがサーキットを疾走する

2010年のモータースポーツ界を憂う。
若者のクルマ離れには「レース活動」。

西山平夫 = 文 ⇒この著者の記事一覧

text by Hirao Nishiyama

photograph by Shoichi Sudoh/AFLO

2010年のモータースポーツ界を憂う。若者のクルマ離れには「レース活動」。

 今回のテーマは「日本のモータースポーツ2010」。

 初手から大きく出たものだが、これには事情がある。

 つい先日、日本の自動車メーカーのモータースポーツ担当者数人とジャンルを超えた様々なテーマで話し合う機会があり、そこで話題になったことを私見を交えながらここに書いてみたいと思ったわけです。

 相手が自動車メーカーの人達だけに、新年早々にして最大の関心は「若者のクルマ離れ」でありました。

クルマが「白モノ家電化」してしまった時代。

 確かにクルマは燃料代が馬鹿にならないし、駐車場代やら保険やら維持費だけでもけっこうな費用はかかる。それならクルマよりケータイやネットやスポーツのTV観戦の方が面白いし、安い。公共交通機関も便利になり日常生活において必ずしもクルマは必要ない。

 そもそもその肝心のクルマにしたって、最近ではどれもこれも性能が向上し「白モノ家電化」していて、別に「絶対にあのクルマじゃなきゃ嫌だ!」というこだわりも無くなってきた。まるでパソコン製品(マウス?)が走っているような外観のプリウスが売れまくっているのも分かりますが、多くのオーナーは将来有力な購買層として成長して欲しいと思っている若者じゃあない(ただし、イマドキの若者もあえてクルマを買うならプリウスでしょうが)。

 むろん東京と地方ではクルマ事情が異なるので……という言い分もある。地方では今も昔もクルマが必需品ではないか、と。その話になると、「それはそうなんですが、実は……」と西国のメーカーさんが小声で語ったのが「売れてるのはもっぱら中古車なんですよね」ということ。

 ようするに、若者はクルマをことさら嫌っているわけじゃないが、クルマに対するこだわりはないし、憧れもないというわけです。

 買おうと思えば買えるモノとなってしまった以上、クルマを選ぶ時に効率とブランドだけしかモノサシはないのは当り前の話だ。

高度経済成長期にはあった、レース活動の熱気。

 これがふた昔前の高度成長期はそうではなかった。

 いまの“アラ還”世代が青年期を送った1970年代、クルマは憧れだった。

 とりわけモータースポーツ志向の若者にとって、レーサーも憧れならそれと等価でクルマも憧れの的。

 生沢徹もカッコよかったが、彼の操るポルシェ906は同じくらいカッコよかった。高橋国光と日産スカイラインGT-R、高橋晴邦とセリカ・ターボ、J・サーティースとホンダRA301……と、憧れのレーサーとクルマの話で貧しい下宿の小さな部屋が異様に盛り上がるというのが1970年代の若者、ありていにいえば40年前の筆者の姿でありました。レーサーやクルマに詳しい男子は一部飛んでる女子にモテ、レーサーやクルマは(あるいはそれを扱ったメディアも)トップ・ファッションだったのであります。

 ひるがえって現今はどうか?

<次ページに続く>

► 【次ページ】  「フェラーリ・ベルリネッタの排ガス吸ったら死んでもいい」

筆者プロフィール

西山平夫

1952年生まれ、新潟県出身。レース雑誌「AUTO SPORT」編集部を経て1984年にフリーランスに。現在F1全戦取材を主軸に「Racing On」「F1速報」「NAVI」等に寄稿。ひいきのドライバーはF・アロンソ。


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