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長友佑都が特殊な走法を身に付け、
「戦えるサイドバック」に変身! 

text by

二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2009/09/28 11:30

長友佑都が特殊な走法を身に付け、「戦えるサイドバック」に変身!<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

オランダ戦ではMFスナイデルともいい競り合いをしていた長友

 当たりにもマケズ、走りにもマケズ――。

 先のオランダ遠征において最も評価を上げた選手は誰か、と聞かれれば、迷うことなく左サイドバックの長友佑都を挙げたい。世界と比べると日本人プレーヤーが見劣りするフィジカルの部分で、オランダとガーナを相手に彼はよく張り合っていた。

フィジカルで渡り合った長友がイエローカードを引き出した。

 特筆すべきは、時間をかけずにトップスピードに入り、プレーが出来ていた点。ファンペルシーやロッベン、あるいはガーナのムンタリの仕掛けについていく守備の面で発揮されただけでなく、その能力は攻撃面でも十分に活かされた。

 オランダ戦で言えば、前半36分のプレー。長友は味方がカットしたのを確認すると、低い位置からトップスピードで駆け上がって左サイドで対峙していたファンデルヴィールの裏を取り、遠藤保仁からのパスを受けた。ファンデルヴィールとの1対1になったがボールを失わず、カバーに回ってきたデヨングに激しいタックルを浴びせられるまで止まらなかった。このプレーでデヨングの警告を引き出している。

 ガーナ戦でも同じような場面があった。前半44分、ペイントシルとの1対1で、長友がスピードに乗って突破しようとしたところを相手が無理やり止めた形となって、ここでもイエローを引き出してセットプレーのチャンスをつくり出した。

 欧州遠征2試合で相手のイエローカードは4枚。そのうちの2枚は、スピードに乗った長友のプレーに起因しているのである。

足を真下に落として、地面をかく──。長友を変えたフォーム。

 この、トップスピードに素早く引き上げる長友の特性は、6月までのW杯アジア最終予選では見られなかったものだ。最終予選当時の映像とオランダ遠征の映像を見比べてみると、走り方にやや違いがあるのが分かる。走る歩幅が短くなり、重心は幾分、低くなっている。

 FC東京の小平グラウンドで練習を終えた長友に走り方の変化について尋ねると、やはり意識的に変えているという答えが返ってきた。

「今、走り方というのはフィジカルコーチと一緒になって、取り組んでいるところ。スピードを上げるためのトレーニングをやっていて、(コーチには)フォームをずっとチェックしてもらっています。大事なのは、お尻に体重が乗っているイメージで走ること。太腿の前とかに体重が乗るんじゃなくて、(お尻に)一番、体重が乗っているから移動がスムーズになるんです」

 長友がこの走り方に本格的に取り組むようになったのは、オランダ遠征の少し前あたりからだと、FC東京の土斐崎浩一フィジカルコーチは言う。

「彼の走り方というのは上に跳ねるようなイメージがあって、浮いてしまっていた。速さを出したいときに、これだとどうしても使う力がピッチにうまく伝わらない。いかに力をピッチに伝えるか。足をできるだけ真下に落としてから、地面をかくイメージ。それをずっと意識させてきました」

 練習ではもっぱら20m弱の距離をダッシュさせ、走るフォームに神経を使わせた。「足を真下に落とす」イメージを持たせたフォーム改造で、20mのタイムもコンマ1秒、コンマ2秒ほど短縮できるようになったのだと土斐崎コーチは言う。

【次ページ】 スピード、スタミナ、バランス。3拍子揃ったサイドバックに。

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