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フィル・ジャクソンの究極スター操縦法。~ジョーダン&コービーを育てた男~ 

text by

宮地陽子

宮地陽子Yoko Miyaji

PROFILE

photograph byYukihito Taguchi

posted2010/01/17 08:01

フィル・ジャクソンの究極スター操縦法。~ジョーダン&コービーを育てた男~<Number Web> photograph by Yukihito Taguchi

ブルズ帝国、レイカーズ黄金時代を築き上げた辣腕指揮官は、唯我独尊のスター選手をいかにしてチームプレーへと導いたのか。
時には心理学者や禅師にもなる、そのコーチング術の深奥に迫る。

 フィル・ジャクソンはNBA史上に残る名将なのだろうか。それとも、単に運と選手に恵まれたコーチなのだろうか。

 NBAヘッドコーチ歴18年で優勝はNBA史上最多の10回、試合の勝率もNBA史上最高の7割と、その実績は文句のつけようもない(2009年12月21日現在レギュラーシーズン1063勝439敗、プレイオフ209勝91敗)。しかし世の中には、そんなジャクソンの実績に対して「スーパースターに恵まれて、運がよかっただけ」と言う人もいる。

写真

マイケル・ジョーダン
1984年ブルズに入団し、2度のファイナル3連覇に貢献。2度の引退、復帰を経て、'03年引退。数々の記録を打ちたて“God”“Air”と称された

 確かに、これまでジャクソンが率いてきたチームをみると、シカゴ・ブルズにマイケル・ジョーダンやスコティ・ピッペン、デニス・ロッドマン、ロサンゼルス・レイカーズにシャキール・オニール、コービー・ブライアント、パウ・ガソルなど、常にリーグ随一のスーパースターたちがいた。しかもほとんどの場合、複数のスーパースターが揃っているチームだった。

 とはいえ、「運がいい」だけでこれだけの実績をあげることができるのだろうか。スーパースターがいるチームをコーチすることは、それほど簡単なことなのだろうか。

「簡単なことではない」とジャクソンは言う。

 強いチームを作るためには、チーム全員の力が必要になる。しかし能力が高い選手は自尊心が高く、チームの概念に収まりきらないことが多い。チームで戦うことと、スーパースターの能力を生かすことを両立させるのは、口で言うほど簡単なことではないのだ。

 実際のところ、ジョーダンもピッペンも、オニールもブライアントもガソルも、ジャクソンがヘッドコーチになるまで優勝したことがなかった。スーパースターがいれば必ずしも勝てるわけではない。

崩壊寸前のチームに向かって「私は救世主ではない」。

 たとえば、'99年6月にジャクソンがヘッドコーチに就任する前のレイカーズ。オニールとブライアントという才能溢れるスーパースターが2人いながら――いや、むしろ2人の存在が故に歯車がかみあわず、不完全燃焼で、チーム崩壊寸前だった。

 そこにやってきたジャクソンは、「この状況を解決したい。そのために、私はこのチームに来た」と宣言した。そう言いながら、一方では「私は救世主ではない。選手たちは自分たちで自分たちの救世主にならなくてはいけない」とも言っていた。一見、矛盾するかのようだが、そう言うことで選手たちの自覚を促したのだった。

<次ページへ続く>

► 【次ページ】 オニールを真のエースに成長させるために与えた試練。

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