SCORE CARDBACK NUMBER

絶対女王・吉田沙保里の
驚異のモチベーション。
~金メダル獲得の向こう側へ~ 

text by

松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

PROFILE

photograph byShino Seki

posted2011/05/19 10:30

絶対女王・吉田沙保里の驚異のモチベーション。~金メダル獲得の向こう側へ~<Number Web> photograph by Shino Seki

 やはり強かった。4月29日と30日に行なわれたレスリングの全日本選抜選手権で、女子55kg級の吉田沙保里は圧倒的な力を示して優勝し、今年9月に行なわれる世界選手権代表に選ばれた。

 あらためて振り返れば、吉田の実績は驚異的だ。'02年、世界選手権に初出場で優勝を果たし、以後8連覇。アテネ、北京と五輪連続金メダル。アジア大会3連覇。国内でも冬に行なわれる全日本選手権で9連覇……10年近くもの間、トップに君臨し続けている。

 その成績から明らかになるひとつの事実がある。スランプに陥ることもなく、休養するシーズンもなかったということだ。残してきた成績もさることながら、その点に驚かずにはいられない。

4年に一度の大舞台の後、モチベーションを維持することの難しさ。

 オリンピックで行なわれる競技の場合、選手は4年に一度の大舞台を目指し、毎日毎日、厳しい練習を重ねる。並大抵の努力ではない。それだけのエネルギーを注いだ末、オリンピックで目標を達成したなら、競技生活を継続するモチベーションに苦労することはよくある。目標が叶わなくても、さらに4年間、練習に打ち込む日々を送る覚悟ができるか、ためらいが生じて思い悩む。だから、結果を残しても残せなくても、オリンピックを契機に引退する選手は少なくないし、続行しても調子を落としたり、あるいは一時的に競技を離れて休養する選手も珍しくない。アスリートも人間である。ごくごく自然なことである。

9連覇がかかる世界選手権とその先のロンドン五輪に向けて。

 だが吉田は、これだけ勝ち続けて世界の頂点に何度立っても、競技生活への疲労など感じさせず、モチベーションを保ってきた。成績がそれを証明しているし、協会の関係者も、より強くなろうとするひたむきさ、練習への熱心さを維持し続けてきたのが吉田であると、語る。

 なぜモチベーションを保ち続けられるのか。尋ねると、吉田は苦笑した。

「毎年勝ち続けるのが夢ですし、負けたくないという気持ちがありますから」

 なぜそう聞くのか不思議だとでも言いたげな表情だった。

 いずれにせよ、モチベーションを長きにわたって継続してきたということこそ、吉田の特筆すべき点である。

 今年の世界選手権には9連覇がかかっている。その先に控えるロンドン五輪へ、吉田に一切の迷いはない。

■関連コラム► 吉田沙保里、V10の陰に母の支えと「永餅」あり。~レスリング世界記録に挑む~
► 実力派ニューフェイスがついに登場!! レスリング界を担う2人の女子高生。

関連キーワード
吉田沙保里
ロンドン五輪
オリンピック
レスリング

ページトップ