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名球会より優勝争い。
横浜・石井琢朗の志。 

text by

永谷脩

永谷脩Osamu Nagatani

PROFILE

posted2006/03/23 00:00

 横浜ベイスターズ・宜野湾キャンプで、田代富雄打撃コーチが言った。

 「ウチのベテランは率先して夜間練習をやってくれるので、若手も手を抜けない。もっとも、彼らは若いころから、当時のベテランに絶対負けまいと練習していたけどね」

 そのベテランとは、16年目の鈴木尚典、17年目の種田仁、18年目の石井琢朗の3人である。

 鈴木は4年契約の最終年である今年、結果を出さないと、来年はないと肝に銘じている。上宮高校の同級生だった元木大介(元巨人)よりも長くユニフォームを着ると心に決めていた種田は、ここ2年続けて3割を打ち、「また野球に欲が出た」と前向きだ。もう一人は2000本安打まであと39本に迫っている石井。一時はスランプに陥ったが、「一年一年が勝負」と言い、昨年はプロ入り初の全試合フルイニング出場を果たした。

 「いつまでもベテランに頼っていてはダメなんだけど……」と牛島和彦監督は、あまりにも元気のいいベテランたちを頼もしそうに見つめる。

 球史では、若手の成長によって上位をうかがい、翌年、その若手が中心となって優勝する例がよくある。ヤクルト、西武、オリックスなどもそうだったし、 '98年に日本一を達成した横浜もそうだった。昨年Aクラス入りした横浜において、石井たちベテランにとっては、一歩間違えば若手に切り替えられる瀬戸際ともいえる。

 2000年には、2000本安打を目の前にした駒田徳広が、当時の権藤博監督から代打を送られ造反劇を起こしたこともあった。そういう場面を見てきた石井は、常に自分を追い込んでいる。

 「監督は同じ力なら若手を使うでしょうが、優勝争いをしていれば経験豊富なベテランを選ぶと信じている。だから、優勝争いをしなければいけないんです」

 同じく2000本安打にあと33本と迫っている日ハムの田中幸雄とよく話すのは、「優勝争いこそが現役を続ける材料になる」ということだ。

 「名球会、引退までの一里塚」とよく言われる。200勝、2000本安打達成とともに引退する選手は多い。だが石井は、記録だけではなく、もう一度8年前の熱く燃えた優勝争いを熱望している。

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