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藤波辰爾、52歳。「無我」にかける想い。 

text by

門馬忠雄

門馬忠雄Tadao Monma

PROFILE

posted2006/10/26 00:00

 「猪木さんの手のひらから逃げたのではなく、降りたんですよ」

 錆びついたブランド、新日本を見切ったドラゴン藤波辰爾、52歳の独立である。

 9月15日、地元九州・アクロス福岡で旗揚げし、25日の東京・後楽園ホールで全5戦を終えた「無我ワールド・プロレスリング」。藤波の愛弟子・西村修(35)ほか後藤達俊(50)、ヒロ斉藤(45)、吉江豊(32)、長井満也(37)、竹村豪氏(34)の所属は7選手。各会場でシングル5試合という小規模のパッケージ興行。久し振りに巡業についてみたのだが、シンプルでわかりやすかった。

 一行を仕切る営業責任者は“ケロちゃん”こと田中秀和リングアナウンサー、外国人選手のブッキングは西村、営業・渉外は藤波の義弟・沼谷幸氏と新日本出身のスタッフが役割分担。グッズ管理・経理は伽織夫人が担当し、藤波はNHKのお昼のテレビ番組に出演するなどタレント活動も続け、無我の広告塔として後援者の挨拶回りに忙殺される毎日。自宅に帰る暇もないという。

 台風13号が九州を直撃した先月16日、別府大会終了後、激しい雨の中であのWWEで活躍したマイク・バートンまでもがスタッフと一緒になってリングの敷板をトラックに運び込んでいるのを目の当たりにした時には驚いた。新日本ではとても考えられなかった光景である。

 「いやぁー、みんなのやる気と熱意には本当に感謝しています。決して背伸びせず、目の前でできることをやっていく。キャパシティが1000人前後の会場で1週間から10日間の短期間シリーズ興行で満員を目標にやっていこうと思っています。できたら3年後には両国国技館でやってみたい」と堅実な経営ビジョンを語る藤波、プロレスラー35年目の新たな旅立ちなのだ。

 ただし、所属選手の平均年齢が40歳。若い選手の養成が急務だろう。9・25には練習生の入門テストも行った。その後楽園大会では1年ぶりの師弟対決・西村戦に敗れ、左手中指骨折の怪我を負ったが今後欠場の心配はないという。

 さて問題は10月31日、宮城・Zepp Sendaiから始まる全3戦の新シリーズ。今度は話題性優先のお披露目とは訳が違うだけに、真の興行能力が問われる無我プロレスだ。

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