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新王者リナレスを生んだ
帝拳の海外戦略とは。 

text by

前田衷

前田衷Makoto Maeda

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photograph bySumio Yamada

posted2007/08/23 00:00

新王者リナレスを生んだ帝拳の海外戦略とは。<Number Web> photograph by Sumio Yamada

 べネズエラ生まれの「ゴールデンボーイ」ホルへ・リナレス(21)がとうとう世界チャンピオンになった。

 去る7月21日、ラスベガスのWBC世界フェザー級王座決定戦で古豪オスカル・ラリオスの猛攻をスピードとテクニックでかわし、終盤の10回、メキシカンを正確な連打で沈めてチャンピオンベルトを手にした。勝った瞬間コーナーに駆け上り「やった!」と日本語で雄叫びを上げたのには驚いたが、後で「それ以上短いスペイン語が思いつかなかったから……」とリナレスは笑っていた。

 帝拳ジムと契約し、17歳で来日して5年。ジムの合宿所で「気持ちは日本人」の生活を続けながら、天性の才能を磨いた。スキルとスピード、カンのよさを生かしたきれいなボクシングは日本のファンも魅了し、今や後楽園ホールを満員にする人気者だ。

 所属する帝拳ジムは、屈指の有力ジム。これを率いる本田明彦会長(59)は、現在のボクシング業界で最も影響力があるといわれる実力者。この業界で“天皇”といわれた父・明氏の死後、高校生で名門ジムを継承し、大場政夫、浜田剛史、リナレスの3人の世界王者を育てた。

 マイク・タイソンが初黒星を喫した「世紀の番狂わせ」のプロモーターとして一躍有名になったが、それ以前から国際的に活動してきた。米国の専門誌の恒例企画「世界の関係者パワーランキング」では、毎年上位に名を連ねている。老舗ジムのプライドもあり、その選手養成はオーソドックス。間違ってもパフォーマンスで売り出すことはしない。現在帝拳ジムはリナレス以外にも粟生隆寛、下田昭文、佐藤幸治の3王者を擁し、後続のホープを何人も抱える。その上、22戦全KO勝ちの現役王者エドウィン・バレロはじめ、海外の契約選手が何人もいる。リナレスで3人の世界王者を育てたと報じられたが、これらを含めれば8人の世界王者を手がけたことになる。

 今回の勝利で大物プロモーターから「リナレスを使いたい」とのオファーが殺到。本田会長はしてやったりだろう。長年の夢は、本場アメリカで「メガ・ファイト」を手がけること。バレロとリナレスを擁して、世界のスーパースターにぶつけ、その座を奪いとる──帝拳の海外戦略がいよいよ動き出した。

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