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見事な進化を見せた、ロッキーのボクシング。 

text by

前田衷

前田衷Makoto Maeda

PROFILE

posted2007/07/26 00:00

 映画『ロッキー・ザ・ファイナル』を観た。「何を今さら」と言われそうだが、今回で6作目となるシリーズ中、終わりまで見通したのは、今回が初めてである。実は1作目を観ていて、あまりに稚拙なボクシング場面に恥ずかしくなり、途中でギブアップして以来、敬遠していたのである。

 ボクシングを題材にした劇映画は数あれど、お薦めは少ない。筆者の勝手な見立てだが、プロレスファンはロマン派、ボクシングファンは現実派が多いのではないか。映画・小説といくら虚構の話でも、どうせなら最後までうまく騙されたい、しかるに荒唐無稽な筋書きや、お粗末なボクシング・シーンが出てくると、それだけで先に進めなくなってしまうのである。

 今回は50代半ばの元王者ロッキーが復帰して現役ヘビー級王者と対決するという、およそ非現実的なプロット。一体どうやってもっともらしく見せるのかとハラハラしたが、エキシビションマッチならありである。想像したよりもリアリティがあり、うまく作ってあった。

 今回は、まず相手のディクソン役に現役のアントニオ・ターバー(現在マイナー団体の世界王者)を起用し、大試合の行われるラスベガスのホテルに会場を設定し、テレビの放送席、リングアナウンサー、といずれも“実物”を配していた。葉巻にソフト帽がトレードマークのバート・シュガー(元リング誌編集長)まで出てきて、凝った小道具にニヤリとさせられた。本物のボクシングの中にロッキーを嵌め込んだような映画なのである。

 『ロッキー1』から30年、この間スタローンは実際にボクサーのマネジメントに関わり、関係者との交流で業界の仕組みを知り、ボクシングをマスターしてきた。その結果が、この映画のリアルさに繋がったのではないか。だから間違っても、勝利のエンディングはありえない。59歳のスタローンのボクシングも、まず許容範囲内。最近盛況の「親父ファイト」を連想させて微笑ましかった。

 今年のボクシング殿堂のセレモニーで、約40人の元王者たちが入場する際に流されたのは、勇壮なロッキーのテーマ曲だった。彼らの現役時代にはまだこの世に存在しなかった曲だが、全く違和感がない。『ロッキー』がボクシング界に及ぼした影響力の一端をみる思いがした。

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