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新天地・近鉄で活躍する川尻哲郎の夢はメジャー。 

text by

永谷脩

永谷脩Osamu Nagatani

PROFILE

posted2004/05/20 00:00

 トレードされた選手が新天地で活躍するケースは案外多い。今年プロ10年目を迎えた近鉄の川尻哲郎もその一人。キャンプから吉田豊彦、加藤伸一といったベテランに混じってマイペースの調整を許されていて、「環境が変わった事で妙な色眼鏡で見られず、ノビノビやれるから気分がいい」と言っていた。

 阪神時代、'98年には中日を相手にノーヒットノーランを達成。日米野球でもシリング(現レッドソックス)と投げあい、9回まで無失点に抑えたこともあった。しかし、毎年のように契約更改で揉め、代理人交渉を行った末にポスティングでのメジャー行きを直訴したこともあって、球団に煙たがられた。ここ数年は登板機会すら減り、昨年の優勝にも貢献できないまま、前川勝彦とトレード。ただ幸運なことに、近鉄には大学時代、高津臣吾(現ホワイトソックス)とともに“亜大三人衆”といわれた小池秀郎がいた。近鉄の家族主義的な雰囲気も、川尻に合っていたのだろう。往時の輝きを取り戻したのだ。

 大学時代は小池、高津に次ぐ3番手。ドラフトでも小池がロッテ指名を蹴って松下電器に入社、高津がヤクルトに指名され入団する中、川尻にはプロから声がかからなかった。日産自動車を経て、阪神に入団、3人の中で最初に頭角を現した。2年目には早くも二桁勝利を挙げたが、その後は……。亜大でも同じだった。当時、監督だった内田俊雄(現総監督)は「身体能力が一番高かったのは川尻、デビューも一番早かったけど、そのうち、小池にも高津にも抜かれてしまった。素質を生かし切れていない」と言う。

 小池は中継ぎとして存在感を示し、高津は球界を代表する抑えとして、川尻が先に興味を抱いていたメジャーに今年から挑戦している。「環境が変わったことで、みんなの期待も大きくなった。妙に規制されない自由がある」という川尻。

 高津のメジャー初勝利が報じられた日、川尻も自身プロ最長の10回を投げぬきダイエー戦で今季3勝目を挙げた。「まだこれだけ投げることができた」と笑うが、その粘りの裏にはメジャー入りで先を越された高津への意地がある。「アイツがやれるのだから、オレだって」という川尻は、メジャーへの夢をまだ捨てていない。

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