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捕手・阿部慎之助に見る
リードとバッティング。 

text by

永谷脩

永谷脩Osamu Nagatani

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photograph byHideki Sugiyama

posted2004/05/06 00:00

捕手・阿部慎之助に見るリードとバッティング。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

 捕手はよいリードができるかどうかで、バッティングの調子も左右されるといわれる。打たれた投手のことを考えていては、自分のバッティングどころではないというわけだ。しかし、巨人の阿部慎之助とダイエーの城島健司は例外だろう。この2人、バッティングの冴えが、投手への強気のリードとなって現れる。阿部の6試合連続本塁打も、その思い切りのよさが出た結果といえる。

 中大時代からバッティングセンスを高く評価されていた阿部だが、インサイドワークについては疑問視されていた。シドニー五輪で捕手として起用されることが少なかったのもこのためだ。野手に転向させたらという声もあったが、本人は納得せず、捕手で獲ってくれる巨人に入団した。

 しかし、捕手として投手をかばって献身的に尽くすよりは、スターが並ぶ強力打線で、一緒になって打ちまくるタイプ。「1−1や1−2のストライクが欲しい時に、投手に何を投げさせるか考えて打席に立っている」という阿部の言葉に、そのメンタリティーがよく表れている。

 阿部が入団した頃の巨人には絶頂期の投手が多かった。少々、大雑把なリードでも球威で抑えてしまえた。ベテラン投手の中には、大胆なリードを好む者もいて、若い捕手を鍛えるというより、おもしろがって好きにさせてくれた。'02年日本シリーズでの対西武4連勝は、初球から平気でフォークを要求する阿部の配球に西武ベンチが面食らったのが勝因のひとつだろう。

 だが、意外性に富むリードは相手に研究されれば脆(もろ)い。巨人の先発投手が球威の落ちた終盤に一発を浴びるケースが多いのは、阿部の繊細さよりも大胆さを求めるリードに原因があるように見えてしまう。これまで力のある投手が揃った環境で育ってきたことで、苦労知らずのリードとなっているところがあったのかもしれない。

 阿部がリードの手本にしている中日の谷繁元信の配球哲学は「基本の応用に意外性がある」というもの。阿部は試合後に野球日記をつけている。最近は、そこにバッティングのことよりも、リード面の記述が多くなってきているという。今シーズン、天性の打撃面で目立っているが、その裏で打たれて勉強したリードを心掛けている。

■関連コラム► 中日の進撃を支える谷繁元信、ベテランの味。 (09/08/27)
► <城島健司の哲学> 打たれた球をどう生かすか、です。 (04/05/06)

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