SCORE CARDBACK NUMBER

中日の進撃を支える
谷繁元信、ベテランの味。 

text by

永谷脩

永谷脩Osamu Nagatani

PROFILE

photograph byTamon Matsuzono

posted2009/08/27 06:00

7月15日の阪神戦で、捕手として歴代1位の野村克也に次ぐ通算2328試合出場を達成

7月15日の阪神戦で、捕手として歴代1位の野村克也に次ぐ通算2328試合出場を達成

「名捕手の存在が10年間、チームを安泰にする」とは球界の格言だが、好調・中日を支えているのは、間違いなく谷繁元信の存在と言っていい。

 今季、中日は川上憲伸、ウッズという投打の主軸を放出し、チームの若返りを図ったが、格言を知ってか知らずか、プロ生活21年目を迎えたこのベテラン捕手だけは、決して手放すことはなかった。2年前、中日を53年ぶりの日本一に導いた立役者の重要性を、落合監督は重々認識していたのである。

 事実、4月7日のヤクルト戦で故障し、約1カ月に渡り戦線離脱を余儀なくされている間、期待されていた若手捕手もその穴を埋めることはできず、中日は5位に低迷。しかし4月30日に復帰を果たすとチームの成績も徐々に上向き、球宴前の8連勝で、ついに首位・巨人に1.5ゲーム差まで詰め寄ったのである。

1シーズンを見通した配球がベテラン捕手の妙。

 かつての教え子、谷繁の活躍を見て権藤博氏(元横浜監督)は「目先の1勝にこだわらないで、ペナントレース144試合、1シーズン全体を考えてピッチャーの投球を組み立てている。1球ごとの配球に味が出てきたね」と、目を細めていた。

 権藤氏のこの言葉を聞いて、ある試合を思い出した。

 それは7月31日のヤクルト戦。先発の吉見一起が6回、2度のフォークの暴投で2得点を許し、負け投手になった時のことだった。

 試合後、谷繁はこう語った。

「アイツのウイニングボールはフォーク。暴投を怖がって、得意なボールを投げさせないリードをしても投手は育たない。この負けは次に生きる良い経験だよ」

 また、8月6日の阪神戦、11連勝中の川井雄太が2回までに8点を失った時、「続投させましょう」と落合監督に進言し、6回を投げ切らせたのも谷繁だった。「いずれ連勝は止まる。調子が悪い時にどう立て直すか学ぶのも、将来のためになる」と、その理由を説明してくれた。

谷繁がいる限り、中日の投手陣は安泰だ。

「いい捕手の存在が投手を成長させる」とも言われるが、ベテランと呼ばれるようになってますます味が出てきた谷繁。「1球1球に一喜一憂しているのはまだまだアマチュアよ」とポツリと言ったその表情を見ていると、中日からまだまだ若手投手が育ってきそうな予感がする。

■関連コラム► 右ストレート、一閃! 巨人対中日。忘れられない乱闘劇。
► 捕手起用で迷走する野村監督。「優勝チームに名捕手あり」の苦悩。

ページトップ