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グレート小鹿が演じた真夏の夜の「リア王」。 

text by

門馬忠雄

門馬忠雄Tadao Monma

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photograph byEssei Hara

posted2008/08/27 00:00

グレート小鹿が演じた真夏の夜の「リア王」。<Number Web> photograph by Essei Hara

 この話、真夏の夜の夢ではなかった。四十数年来のわが友、グレート小鹿がシェイクスピアの悲劇「リア王」を熱演したのだ。何が起こっても不思議のない混迷のプロレス界にあって、私にとっては今年の10大ニュースのトップである。

 横浜がホームリングの大日本プロレスが北京五輪開幕前夜の8月7日、赤レンガ倉庫でプロレスと演劇を融合させた「リア王」の特別公演を行なった。

 何より舞台装置の背景がいい。ホールの窓からは港の灯り。大桟橋にはおりよく客船「にっぽん丸」が停泊中だった。ホール中央にリングが設置され、正面には蛍光灯が積み上げられた立派な祭壇。ステージにはリア王が陣取るイスが置かれ、重厚な雰囲気を醸しだしてくれる。

 驚いたことに、ゴングは大日本のテーマ曲をアレンジした松田麻由美の奏でるバイオリンだった。プロの音楽監督がつき、演出も悪くない。舞台と観客席が近く、左側にはスタンド席も設けられ、非常に見やすい。

 老いぼれたリア王を演じる小鹿社長。足元にはレスリング・シューズがのぞく。国を3人の娘に分割して与えるというストーリーをそれぞれ所属レスラーが作品上の名前で演じ、裏切り、跡継ぎを巡る問題、侵略のドラマを試合形式で見せていく。

 休憩を挟んでの2部構成だったが、途中にはゴスペルシンガーで声優のコング桑田が「リア王鎮魂歌」をバリトンで歌う心憎い演出もあった。最後はローズ&蛍光灯祭壇デスマッチだ。エース伊東竜二がコーデリアとなって、ライバルのエドマンド佐々木貴と激突した6人タッグマッチは壮絶の一言。蛍光灯のパカーンという破裂音と硝煙、肌に食い込む赤いバラの棘。夥しい出血に観客は息を呑む。同行の原悦生カメラマンも「これは凄過ぎる」と興奮気味だった。

 この日の入場者数は350人(主催者発表)。ファンの底辺拡大とデスマッチ路線のステージアップのため、今後も続けるというから、新しい興行の形として面白い試みだ。舞台監督として指揮を執った登坂栄児統括部長は「これからも新しい企画をどんどんやって、'10年の15周年イベントを目指したい」と意欲的だ。横浜市の住民としては、地域密着型のプロレス活動を応援していきたい。

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