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過去を捨て勝者となった
ランドルフの新境地。
~開花したNBAの元「問題児」~ 

text by

宮地陽子

宮地陽子Yoko Miyaji

PROFILE

photograph byNBAE/Getty Images

posted2010/02/10 06:00

ブレイザーズからニックス、クリッパーズと移り、新天地でようやく本領を発揮し始めた

ブレイザーズからニックス、クリッパーズと移り、新天地でようやく本領を発揮し始めた

「過去は過去。きょうから新しい章を始めたい」

 去年7月、トレードでメンフィス・グリズリーズに移籍したザック・ランドルフは、入団記者会見でそう宣言した。

 丸い顔は笑うと子供のような無邪気な表情になる。グリズリーズのヘッドコーチ、ライオネル・ホリンズが「大きなテディベア」と喩えたが、確かにぬいぐるみのようなほんわかとした風貌である。

 しかしNBAに入ってから8年の間、彼はテディベアのように人々から愛される存在ではなかった。19歳でプロ入り。最初に入ったポートランド・トレイルブレイザーズでは、練習中にチームメイトを殴ったり、マリファナや飲酒運転で逮捕されるなどの問題を起こし、たちまち「問題児」のレッテルを貼られた。

 コート上での評価も高くなかった。プロ3年目以降の成績は平均20点・10リバウンドとオールスター級だが、シュート成功率が低く、ディフェンスをさぼることも多かったため、数字ほど評価されなかった。プレイオフに出たのも脇役だった最初の2年だけで、「チームを勝たせることができない選手」とも批判された。

9kgの減量に成功し、リーダーとしての自覚も芽生えた。

 そんなランドルフが、今季、宣言通りに新しい一面を見せている。体重を9kg絞ってシーズンイン。無駄打ちを減らしてシュートを選ぶようになったことでフィールドゴール成功率は5割を超えた。ディフェンスをひきつけて味方にボールを回すことで、チームメイトの成績も軒並み上昇している。平均年齢24.3歳とリーグ一若いグリズリーズのリーダーとしてチームを支える存在でもある。ホリンズ・ヘッドコーチも「彼がチームに与える影響は大きい」と絶賛する。

 開幕直後は1勝8敗と苦戦していたグリズリーズも、11月半ばから勝ち星が先行するようになり、12月(9勝4敗)、1月(10勝5敗)と順調に勝ち星を増やした。2月1日現在26勝21敗、競争の激しい西カンファレンスでもプレイオフ圏内のカンファレンス8位につけている。チーム成績とともに、世間のランドルフへの評価も鰻上り。1月28日には、対戦相手のコーチたちによる投票でオールスターに初選出された。

 入団会見でランドルフは言っていた。

「人は僕のことを勝者ではないと言う。でも僕だって勝ちたいんだ」

 今、その言葉を笑う者はいない。

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