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記録を塗り替えた「息子」に
「父」が贈った言葉。
~コービーとウェストの師弟関係~ 

text by

宮地陽子

宮地陽子Yoko Miyaji

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photograph byNBAE/Getty Images

posted2010/02/22 06:00

記録を塗り替えた「息子」に「父」が贈った言葉。~コービーとウェストの師弟関係~<Number Web> photograph by NBAE/Getty Images

ウェストはかねてから「総合力では彼こそが球団史上最高の選手だと思う」と語っていた

「成功を恐れるな」

 これは、コービー・ブライアント(ロサンゼルス・レイカーズ)がルーキーの時から心に留めていたアドバイスである。アドバイスをくれたのはジェリー・ウェスト。1996年、ブライアントが17歳でNBA入りしたときのレイカーズGMであり、彼自身も'60年代から'70年代の頭にかけてレイカーズの一員として活躍した往年の名選手。NBAロゴに彼のシルエットが使われているほどのスーパースターでもあった。

 若く未知数だったブライアントが将来特別な選手になると見込んだウェストは、ドラフト直後のトレードで彼を獲得すると、折に触れて自分の知識を伝えた。そんなウェストをブライアントは父のように慕っていた。

 若いブライアントが大人の世界で認められるのは簡単なことではなかった。「世界で最高の選手になる」という野望を持ち、隠そうともしなかった彼は周りと衝突し、コート上でも若さ故に失敗することも度々。それでも上を目指し続けたのは、ウェストのアドバイスがあったからだった。努力し続けたからこそ、今では4回のNBA優勝、リーグMVPや得点王など多くの成功を収め、最高の選手として認められるようにもなった。

通算得点2万5192点を記録した“息子”は“父”を越えた。

 そんなブライアントにとって、ひとつの区切りとなる出来事があった。2月1日のメンフィス・グリズリーズ戦でレイカーズ史上最多得点選手になったのだ。多くの偉大な選手を輩出している伝統あるチームでの最多得点というだけでも特別なのだが、何より、このとき抜いたのがウェストの通算得点2万5192点だったということに意味があった。まさに“息子”が“父”を越えた瞬間である。

 ふだん得点記録にはあまり関心を示さないブライアントも、このときばかりは「僕が達成した中で最も特別な記録。誇りに思う」と喜んだ。

「彼は本物のプロフェッショナル」とウェストは賛辞を送った。

 そして、抜かれたウェストも、かつての17歳の少年が自分の記録を抜くような選手に成長したことを心から祝福した。

「人々が記録を破るということはすばらしいことだが、破ったのが彼ならなおさらだ。彼は本物のプロフェッショナル。毎晩お金を払ってでも見たい選手だ」

 ウェストのこの言葉こそ、ブライアントにとって何よりの賛辞だった。

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