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離島のエース、大嶺祐太の決断。 

text by

永谷脩

永谷脩Osamu Nagatani

PROFILE

posted2007/01/25 00:00

 ロッテのボビー・バレンタイン監督が抱くソフトバンクへの対抗心は相当なものだ。年末には、契約交渉がこじれたズレータを自らの人脈を駆使して引き抜き、昨秋のドラフトでは、ソフトバンクと相思相愛だった大嶺祐太(八重山商工)を強行指名して獲得。どちらもライバル球団の戦力ダウンのためには何でもするというボビー流の戦略だった。

 大嶺の親代わりである八重山商工・伊志嶺吉盛監督の下に、「ロッテの動きが変だ」とソフトバンク関係者から電話が入ったのは、ドラフト前夜のことだった。案の定、バレンタイン監督は1位指名をやってのけた。青天の霹靂に戸惑う大嶺。最終的には自分自身を納得させロッテ行きを決めたが、チームの戦略とは別にこの選択は正しかったと思う。大嶺のようなハングリーな選手はプロの世界で大成するとよく言われるからだ。

 桑田真澄、イチロー、松坂大輔、古くは江川卓など歴代の名選手も、特別裕福とは言えない家に生まれた。大嶺は特に苦労した。家庭の事情で3つのころから祖父母に預けられ、10畳の部屋に兄弟5人が身を寄せ合うという環境で育った。伊志嶺監督はそんな大嶺に、「素材は良いがいつも目をかけていないと脱線する」という不安を抱いていた。だからこそ九州で気心の知れている人の多いソフトバンクに入ってほしかったのだ。

 ロッテ入りの鍵を握ったのは、古賀英彦・ロッテ二軍監督の存在だった。「九州・熊本出身だし、日本で引退した後、アメリカや中南米でもプレーした苦労人。祐太のこともわかってくれるはず」と、古賀の球歴を知れば知るほど伊志嶺監督は安心したという。ロッテの二軍はイースタン2年連続優勝。今年からは混成チームで戦う「フレッシュリーグ」が始まることもあって、選手たちが試合に出られるチャンスは広がっている。「ボビーは若手にチャンスを与えるのが好きだから、安心して来ればいい」という瀬戸山隆三球団代表の言葉には、ロッテのバックアップ体制に対する自信がうかがえた。

 大晦日、母校の八島小学校で行われた野球教室に、ひょっこりと顔を出した大嶺。しっかりと引き締まった身体でこう言った。「今は島の代表という気持ちがある」。決断が正しかったことを証明する日は、そう遠くないかもしれない。

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