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反省なき日本プロ野球 

text by

海老沢泰久

海老沢泰久Yasuhisa Ebisawa

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photograph byHideki Sugiyama

posted2007/01/24 00:00

反省なき日本プロ野球<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

 1月13日の新聞各紙に、公認野球規則が34カ所にわたって改訂されたという記事がちいさく載っていた。

 大きな改訂は、打撃姿勢にはいるのが遅い打者に対して、球審は投手の投球を待たずにストライクの宣告ができるようになることと、無走者の場合の投手の投球間隔が、旧来の20秒以内から12秒以内に短縮されることの2点だ。

 いずれも試合のスピードアップ化のためだということだが、日本のプロ野球はずいぶん前から試合時間が長すぎると問題になっていたのである。これでそれが改善されるならいうことはない。

 しかし、いまごろになってどうして突然こういう改訂がなされたかというと、アメリカの野球規則が去年改訂されたからなのである。日本の野球規則は、アメリカの規則が変わるとそれを一年遅れでそのまま導入するというのが昔からの慣例だが、アメリカが変えたからといってこうも簡単に変えられるなら、どうしてもっと早く独自にこれくらいの改訂をしなかったのだろう。試合のスピードアップは、アメリカよりも日本のほうがずっと深刻な問題だったのである。

 もし、3年前のストライキ騒動のあとにこういうことをしていれば、日本プロ野球は球界をあげて新しく生まれ変わろうとしているのだということをアピールできただろう。

 しかし、結局は、交流戦と、セ・リーグもパ・リーグにならってプレーオフをすることにしただけで、興行面の手直し以外ほとんど何もなかったのである。

 たとえば、各球団の赤字問題だ。あのストライキ騒動は、多くの球団が赤字経営で、このままでは球団を維持できないから、維持できる球団だけで1リーグにしてやっていこうという経営者側の意向が発端になって起きたのである。その問題もまったく解決されていない。むしろ、ジャイアンツ戦のテレビ視聴率が落ちて放映権料が下がり、そのぶん各球団ともに収入が減って、経営は悪化していると思われたのである。

 ところが、選手の年棒は天井知らずに上がっている。去年、ホークスが松中と5億円で7年契約したときいておどろいたが、今年はタイガースが金本とそれを上回る5億5000万円で3年契約した。ジャイアンツも小笠原と3億8000万円、ドラゴンズも岩瀬と3億8000万円、川上と3億4000万円で契約している。

 ストライキ騒動のとき、このままではプロ野球がつぶれるようなことをいっていたのは何だったのだろう。あれ以前と何も変わっていない。

 いったいどうして彼らは自分では何もできないのだろう。去年のオフは松坂のレッドソックス移籍でポスティングシステムが注目の的になったが、あれもアメリカ側が考えたシステムだ。日本野球が空洞化するからあのシステムは廃止しようという声もあるようだが、廃止してもFA権を取得すればアメリカに行きたい選手は行くことが分かっているのだから、ポスティングシステムを廃止するだけでは空洞化は止められない。しかし、それを防ぐ有効なシステムなりアイデアなりを日本側が考えているという話は、これもきいていない。

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