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打倒!朝青龍の最右翼、黒海太強さの秘密。 

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服部祐兒

服部祐兒Yuji Hattori

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posted2004/07/15 00:00

 初場所初日からの連勝記録こそ35でストップしてしまったが、初の3連覇を達成した朝青龍。その後の中国公演や勝ち抜き大相撲などの花相撲でも優勝街道をひた走るひとり横綱である。年間6場所完全制覇、年間最多勝という新たな目標を掲げて臨む名古屋場所も、死角は全く見当たらない。飽くなき勝利への執念と、横綱としての責任感は、やはり他の追随を許さない。

 特に先場所は、星の差一つの相手を無言の圧力で追いつめる、自身初の逆転優勝を飾った。決定戦という大一番を制しての優勝の味は、そのこぼれんばかりの満面の笑みが示すように、格別だったに違いない。先行逃げ切りだけではなく、逆転での優勝の味を知った朝青龍が大崩れすることは、余程の怪我でもない限り考えにくい。ライバル不在という精神的には酷な状況ではあるが、朝青龍の名古屋場所制覇の確率は、100%に限りなく近いといえる。

 その実力差を何とか縮めようと、今や幕内力士全員が「打倒! 朝青龍」のもと、稽古を重ねている。今場所、私の推奨力士は、入幕4場所目、前頭二枚目に躍進してきた黒海である。その四股名が示す通り、ヨーロッパの黒海に面するグルジア出身。外国出身としてモンゴル勢ばかりが脚光を浴びる中、十両の琴欧州と共に異彩を放つ力士である。彫りの深い目鼻立ちに加え、濃い眉と髭。日本の大相撲にかける黒海の青い目の奥には、祖国で体験した悲惨な現実が焼きついている。

 イスラム勢力の強い故郷スフミでは、分離独立を求めて内戦が勃発。'93年秋、12歳の黒海は、銃撃戦の中、グルジアの首都トビリシへ脱出した。国内難民として住んだトビリシでレスリングを始め、'99年欧州ジュニア王者となった。そのとき、衛星放送で大相撲の存在を知り、追手風部屋に入門。祖国を後にした。「戦争を体験して気持ちが強くなった」という真摯な気持ちと、恵まれた体力から生じる圧倒的なパワーが合体した攻撃相撲の迫力は、ストレートに観客の心に響く。

 先場所は大関武双山に勝ち、10勝。三賞こそあと一歩で逸したが、持ち味を活かす相撲の型がはっきり見えてきた。今場所は、初の横綱大関陣総当りの場所。好きな日本語は「一生懸命」という黒海が、上位の壁にどう挑むのか。興味津々である。

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