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権威を投げ出した審判団の無責任な判定。 

text by

服部祐兒

服部祐兒Yuji Hattori

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posted2004/08/12 00:00

 なぜ、「取り直し」という中途半端な判定が下されたのか。翌日、北の湖理事長は「テレビカメラの角度と土俵下の審判の目線の角度は異なり、判定は現場の審判に委ねるしかない」と苦しいコメントを発したものの、抗議電話が殺到したように、釈然としない思いが強く残った。

 問題の取り組みは、中日結びの朝青龍対琴ノ若戦で起こった。無敵の強さを誇った全勝の朝青龍が、それまで1勝しかしていなかった幕内最年長の琴ノ若の左上手投げを食らい、大きく弧を描いて裏返し。柔道なら、文句無しの一本。信じがたい光景に、座布団が紙ふぶきの如く乱れ飛んだ。誰もが琴ノ若の勝ち名乗りに拍手喝采の準備をしていた矢先、思わぬ展開が待ったをかけた。

 何と、審判から物言いがついたのだ。

 確かに朝青龍は投げられても驚異的な粘り腰を発揮。右手の廻しを離さず琴ノ若にしがみつき、ブリッジする形で腰を浮かせていた。一方、琴ノ若は左上手投げの左手を離して手をついた。明らかにその手は、朝青龍の背中よりも早く地面についた。行司は重ね餅を避けようとした琴ノ若の左手を“かばい手”と認めたが、審判団の見解は違っていた。

 “かばい手”の前提条件は、朝青龍の最後の体勢が死に体であること。死に体とは、自らの体を支えられなかったり、体勢を立て直すことができず、相撲を取り続けられないと判断された状態を指す。審判団は死に体を認めなかったわけだが、だとすれば、あの体勢から朝青龍が主体的に逆転技を繰り出す可能性があったと考えたことになる。だが、最後に琴ノ若がバランスを崩したのは、朝青龍が下手を離さず、顔の上に落ちるのを避けようとしたためで、いわば琴ノ若の優しさから生じたもの。稽古場で、もし下位力士が朝青龍と同じようなことをしたら、恐らく上位力士はその危険性を指摘し、烈火の如く怒るだろう。

 今回の審判団の判断には大いに不満が残るが、さらに不可解だったのは朝青龍の死に体を認めなかったにもかかわらず、取り直しという結論を出したこと。琴ノ若の手は明らかに早くついており、勝ちか負けの結論でしかあり得ない。審判団が自らの権威を投げ出した幕引きは、あまりにも無責任と言えよう。

 強運の持ち主、朝青龍。結果的にはこの拾った星が、4連覇に大きくものを言った。

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