SCORE CARDBACK NUMBER

声に出して読んでほしい。東芝主将の完璧な言葉。 

text by

大友信彦

大友信彦Nobuhiko Otomo

PROFILE

photograph byShinsuke Ida

posted2005/11/24 00:00

声に出して読んでほしい。東芝主将の完璧な言葉。<Number Web> photograph by Shinsuke Ida

 その言葉が頭から離れない。

 東芝府中のキャプテン冨岡鉄平は、10月22日、トップリーグの全勝対決となった三洋電機とのアウェー戦に32対51で敗れたあとの会見で、汗にまみれたジャージー姿のままで言った。

 「三洋さんには勢いがありましたが、ウチは勢いだけのチームにやられるほどヤワな練習はしていないし、この試合に向けてしっかり準備してきました。ケガ人はいたけれど、層の厚さにも自信がある。素直に、きょうの力は三洋さんが上回っていたと思います。これからマイクロソフト杯と日本選手権がありますので、2回とも戦って、2回とも今回以上のスコアで勝ちたい。非常に高いモチベーションを頂けたことを感謝しています」

 記者は思わず会見場で拍手していた。一見ありきたりにも思えるが、試合は終わったばかり。言えそうで、なかなか言えない言葉だ。みなさんもぜひ、声に出して読んでみて下さい。記者はもう暗誦している。21年の記者生活で出会った、最高に素晴らしい言葉だった……そこまで感動してしまうのも、レフリー批判や、相手への敬意を欠いたコメントを聞き飽きたからだ。ラグビーだけではないと思うが。

 グラウンドは狭かった。レフリングにも微妙な点はあった。でもそれらすべてがラグビーだ。すべてを飲み込んで、冨岡は一切言い訳せずポジティブに総括した。改めてじっくり読み返すと、驚くほど完璧なコメントだ。日本人の謙虚さはともすると自虐や卑下に向きがちだが、冨岡は自分たちを恥じることなく相手を讃え、信頼する仲間とともに、前へ進もうとする強い意志を示した。東芝府中が国内最強の座に君臨している理由の一端が、そこに現れていた。スポーツとは、こんな素晴らしい人格を育てるために、社会全体がコストを分担して育んでいるのだと思う。2011年W杯の開催国は本号発売日に決まるが、ラグビーが社会に貢献できるのはこういう理由があるのだと訴えてほしかった。

 冨岡鉄平。福岡県生まれ。ぎんなんリトルラガーズで楕円球を追い始め、中村三陽高、福岡工大を経て東芝府中に入り6年目。まったく無名だったCTBは、今では自身が日本代表だ。28歳。女性の皆様には残念だが既婚のナイスガイです。

ページトップ