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ユートピアの移籍と「ゴドルフィン」の意図。 

text by

片山良三

片山良三Ryozo Katayama

PROFILE

photograph byKiichi Yamamoto

posted2006/05/25 00:00

ユートピアの移籍と「ゴドルフィン」の意図。<Number Web> photograph by Kiichi Yamamoto

 「歴史ははじめからそうなっているのだから」と言わんばかりの勝ち方をしてみせたのが、天皇賞(4月30日、京都、芝3200m、GI)のディープインパクトだった。

 急な下り坂が罠のようにしつらえてあるのが淀の3コーナー。あそこからスパートしたらゴール前で必ずバッタリ止まってしまうから、と先人たちが口を酸っぱくして言い伝えてきたわけだが、不世出のスーパーホースにその常識は通用しなかった。たしかに、直線の中ほどではリンカーンが勇躍差を詰めてきたようにも見えたが、その直後には逆に突き放して差を広げた。16ハロンの長丁場で、上がりの3ハロンが33秒5というのだから、止まるどころの騒ぎではない。終わってみれば、3馬身半差2着のリンカーンもレコードタイムを更新していた。横山典弘騎手が両手をオーバーに広げながら「生まれてきた時代が悪かったとしか、慰める言葉がない」と嘆いたセリフが、全てを言い表している。

 武豊騎手としては常識破りの競馬をしたつもりはなさそうだ。「3コーナーの手前で急激にペースが落ちたと感じました。そこまでは完璧に折り合っていたので、さらに我慢を強いるよりは行かせてあげたほうがいいと思ったんです」と、レース直後の談話。後日、レースのラップを確認して、「ほら、やっぱり遅くなっていたでしょう」と、自分のペース判断に誤りがなかったことに素直に笑顔をほころばせ、「それにしても、あんなところから飛んだんですねえ」と、まるで他人事のように驚いてみせた。ディープインパクトが、何十年に1頭とも言われる稀有な才能に恵まれた名馬であることを、何度でもビデオを再生して確認してほしい。

 その翌週、今年の「ゴドルフィン・マイル」を快勝したユートピアが、現役競走馬として国際トレードされたというニュースが伝わった。4億円以上の大枚をはたいたのはアラブ首長国連邦ドバイの王族マクトゥーム家が率いる世界有数の大馬主軍団「ゴドルフィン」だ。遅かれ早かれ種牡馬となるはずのディープインパクトを、数十億円単位の大金で買う用意があるとも言われており、ユートピア、ディープ両馬のオーナーである「金子真人ホールディングス(株)」とのこの時期の取引に、思わず他意を読んでしまう。

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