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自我か、チームか。田臥勇太が直面する壁。  

text by

宮地陽子

宮地陽子Yoko Miyaji

PROFILE

posted2007/04/05 00:00

 海外で暮らしていると、時々、自分が日本人であることを思い知らされることがある。現地の生活に慣れていく一方で、だからこそ、自分の中にある日本的な部分に気付くのだ。

 NBAに挑戦するために4年前からアメリカで暮らしている田臥勇太も、つい最近、そのことを痛感したという。

 NBA傘下NBAディベロップメント・リーグのベイカーズフィールド・ジャムでプレーしている今シーズン、田臥はこれまでになかったような苦労をしている。何しろチームが勝てない(3月20日現在13勝29敗)。さらに田臥自身も、プレータイムが限られ、自分の能力をアピールすることもできずにいる。

 NBAに上がるためには、少しくらい自己中心的でもガツガツとアピールするプレーをしなくてはいけない。しかし、負け続きでばらばらなチームだけに、気付くと「日本で学び、培ってきた真面目な部分」(田臥)が前面に出て、チームをまとめるために自我を引っ込めてしまう自分がいるのだという。

 「それを見て、優等生で言われた通りのことをやっていると思ってくれる人もいるかもしれない。でも、ここでそんなことをやっていたら上(NBA)には上がれない」と田臥は言う。マイナーリーグからNBAに上がるためには、時には日本人的な面を切り捨てなければならない。

 脱日本人宣言とも言える決断なのだが、もちろん、だからといって日本人であることを捨てたわけではない。

 そういえば先日、田臥は今年夏に日本で行われるアジア選手権の日本代表候補を辞退した。NBA挑戦を続け、その準備を優先するために選んだ道だった。

 「NBAチームに保証されている身だったらともかく、チャレンジしていかなくてはいけない立場なので」と田臥は辞退した心境を語る。

 日本代表を蔑ろにしているわけではない。考えに考えた末に、これが、代表チームにとっても自分にとっても最善の道だと選んだことだった。

 「日本の仲間の中にも全日本を目指してやっている選手がいますから、そんな中で自分だけ中途半端に出るのは失礼にあたると思う」と田臥は言う。

 やはり根っこは日本人、限りなく真面目なのだった。

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