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中止の危機もあった皐月賞の「舞台裏」。 

text by

片山良三

片山良三Ryozo Katayama

PROFILE

photograph byKiichi Yamamoto

posted2007/05/03 00:00

中止の危機もあった皐月賞の「舞台裏」。<Number Web> photograph by Kiichi Yamamoto

 密かに春闘の標的となっていた皐月賞。交渉決裂なら厩務員組合がストライキを決行し、最悪のシナリオとしてクラシックレースの中止順延という事態も懸念されていたことを知る人は少なかった。

 競馬記者はたくさんいるのに、春闘情報は実りある記事になりにくい。労働者側が争点を外部に積極的にアピールしないからだ。プレスリリースとして提供されるのは団交がいつ行なわれるかぐらいのもの。これでは囲み程度の記事にしかならない。ストライキという非常手段をちらつかせるのなら、ファンの理解を求める必要があるわけで、まずは言い分を記者会見で明らかにすべきだろう。毎年、疑問に思うことだ。

 今年の場合は、使用者側が給与カットを突きつけたことが出発点だったことから、組合が強硬に出ないわけにはいかない事情があったと聞く。決して安くない組合費を各組合員から徴収しておいて、「下げられました」と報告するだけでは面子が立たない。観測筋が、今年は紛糾する、と読む理由はそこにあった。

 水曜に取りつく島もなく決裂した団交は、木曜の夜遅くになってようやく妥結した。皐月賞の出馬表は木曜の午後にスケジュール通り発表されていたため、もしあの時間帯で労使交渉が妥結に至っていなかったとすると、マスコミも中止の気配を察して一斉に騒ぎ出すことになっていただろう。そういう意味ではスレスレの解決だった。

 最終的には給与は微増。調教師会、労組、それぞれが面子を保つことができる形で、文字通り「妥結」したわけだが、しこりは残ったままだという。お金を出す立場にある馬主会は、高騰した預託料(1頭の月額は60万円を下らない)に不満を持っているし、調教師会は「その預託料の70%は従業員の人件費」としている。地方競馬、たとえば九州なら預託料は15万円台で済むという現状があるだけに、賞金が高いからという理由で人件費を上げ続けるのは時代に合わない。経済に詳しい馬主たちだからこそ、よけいに譲れない部分だというのもよくわかる。

 華やかな舞台の裏で繰り広げられる生々しい駆け引き。ファンの視線を意識しない決着を繰り返すのが一番よくないと思うのだが。

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