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“秀才型”スラッガー、
横浜・筒香が与えたインパクト。 

text by

小関順二

小関順二Junji Koseki

PROFILE

photograph byAkane Ohara

posted2009/08/05 06:00

弱点とされた外角打ちも会得し、打撃に穴はない。強肩を生かしたサードの守備も鉄壁だ

弱点とされた外角打ちも会得し、打撃に穴はない。強肩を生かしたサードの守備も鉄壁だ

 夏の甲子園大会の地区予選を振り返ってみると、横浜高校の主砲・筒香嘉智(三塁手・右投左打)の充実ぶりに目を奪われた。神奈川大会では準々決勝で優勝した横浜隼人に延長の末に惜しくも破れたが、高校通算69本塁打は立派である。

 地区予選前、6月14日の銚子商戦から7月8日の横浜商大戦までの練習試合で放った本塁打は8本。みごとなハイペースだった。さらに目を奪われるのが対戦相手の顔ぶれで、銚子商、東海大浦安、常葉菊川、東海大甲府、花咲徳栄など甲子園の常連校が続く。63号は常葉菊川の萩原大起、65号は東海大甲府の快速球左腕・渡辺圭、66号は花咲徳栄の五明大輔という具合に、高校球界でも名前が知られた本格派から打ってきた。

 5月30日の花巻東戦では、高校ナンバーワン左腕の菊池雄星から55号本塁打を放ち、6月20日の東海大望洋戦ではドラフト上位候補、真下貴之を本塁打こそ出なかったが4打数3安打と攻略し、左腕相手でも苦にしない懐の広さ、深さも存分に発揮している。

打撃理論を説明できる“言葉を持った”強打者。

 筒香の凄さは無駄なことを一切しない、ということに尽きる。例えばバッティングの際にバットを大きく引いたりしない、“反動”を極力抑えたバッティングは、これが高校生かと目をみはらされる。いつから反動を使わないで打っているのかと聞くと「中学生になって本格的に野手になってからです」と言われた。プロでも中島裕之(西武)など多くの一流選手が反動を使って打っているのに、筒香は中学生で反動を抑え込もうとしていたという。そのことに、ただただ驚かされた。

 2年前に甲子園を沸かせた中田翔(日本ハム)が依然、苦労しているのを見て、「筒香も同じ轍を踏むのか」と危ぶまれそうだが、2人の違いは野球を語る言葉を持っているかどうかだ。中田は本能で本塁打を量産した天才だが、筒香は理詰めで考えながら打つ形を構築してきた秀才型の選手である。例えば、すり足と一本足打法について聞くと、「一本足打法だと打ちにいったときに体がドーンと前に出てしまいますが、すり足だとそっと出せるんです」と答えてくれた。こういう言葉を持っている選手は、バッティングの修正に要する時間も短いものである。

 “ハマのゴジラ”の愛称より、言葉を備え、理詰めでバッティングを考える習慣ができている筒香には、“ハマのメカゴジラ”の愛称のほうが似合っている。

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