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「後悔はありません」。千葉真子の爽やかな引退。 

text by

藤山健二

藤山健二Kenji Fujiyama

PROFILE

posted2006/09/14 00:00

 女子マラソンの千葉真子(豊田自動織機)が8月27日の北海道マラソンで現役を引退した。10日前に右太腿裏を痛め、最後のレースは2時間48分57秒で11位と不本意な結果に終わったが、信条の「ベストスマイル」でゴールした千葉の表情には一点の曇りもなかった。コースの方を向いて一礼すると「15歳から走り始めて、もうお腹いっぱい走りました。満足です」とファンにあいさつし、優勝した吉田香織(資生堂)を上回る大きな拍手を浴びた。

 まだ30歳。34歳の高橋尚子(ファイテン)が北京五輪を目指していることを思えば、早すぎる決断といえるかもしれない。しかし普段の「ベストスマイル」からは想像できないほど、千葉の選手生活はいつもケガとの戦いだった。京都の名門・立命館宇治高3年の時に左足を骨折。故障が癒えて旭化成に入社してからは、トラックの1万mで活躍、'97年世界選手権では見事に銅メダルを獲得した。しかし、その後マラソンに転向してからは両足甲の故障や恥骨炎に悩まされ続けた。原因は練習のし過ぎだ。「走ることが好きなんじゃなくて、一生懸命できることが好きだった」という千葉は、旭化成を退社して小出義雄氏の指導を受けるようになってからも、練習では周囲の制止を振り切って走ることが多かった。結果的にそのひたむきさが「一生懸命やればやるほど痛みがひどくなる悪循環」となり、引退を早めたことは否定できない。

 だがそれも自分の信条を貫いての結果であり、「後悔はありません」という言葉に偽りはないだろう。今後はしばらく休養した後に「次のステージに進みたい」という。具体的にはまだ決まっていないが、マルチな才能を生かしてマラソンの解説はもちろん、執筆活動やCD製作など、様々な形でチャレンジを続けていくことになりそうだ。

 千葉の引退は日本の女子マラソン界にとっては残念だが、2年後に迫った北京五輪の代表選考に大きな影響はない。五輪連覇を狙う野口みずき(シスメックス)、昨年の東京国際で復活した高橋尚子、そして元日本記録保持者の渋井陽子(三井住友海上)の「3強」はまだまだ健在。20代前半の若手が育っていないのが心配だが、北京までは今のメンバーで何とか乗り切れるはずだ。

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