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ファイナルで覚醒する
心優しきスーパーマン。
~レイカーズ優勝、陰の主役~ 

text by

宮地陽子

宮地陽子Yoko Miyaji

PROFILE

photograph byNBAE/Getty Images

posted2009/06/19 06:00

ファイナルで覚醒する心優しきスーパーマン。~レイカーズ優勝、陰の主役~<Number Web> photograph by NBAE/Getty Images

 ロサンゼルス・レイカーズのラマー・オドムには、ステレオタイプな物の見方を覆されることが多い。

 ニューヨーク出身の選手はアグレッシブで自己中心的にも見えるほど強いメンタリティを持っている? オドムはニューヨーク出身だが、彼ほどまわりの人間を第一に考える人はいない。選手としてはその優しさが弱点だと言われるほどだ。

 プロ選手が最高のプレーをするためには正しい食生活が不可欠? オドムは無類の甘いもの好きで、試合前、試合中、試合後、そして寝る前も朝起きた後も、キャンディやチョコレート、グミを食べている。それを聞いたレイカーズ・ファンの医者が「彼が集中できないのはキャンディが脳に与える影響に違いない」とコメントし、全米から取材に集まってきた報道陣の格好のネタとなっていた。

不幸な境遇がオドムの覚醒を妨げてきた。

 キャンディの影響かどうかは別にして、確かにオドムは集中力に欠けるところがある。体格、身体能力、バスケットボールのスキルと三拍子揃い、本人さえその気になればリーグのトップスター級の活躍ができるはずなのだが、実際にはそんな“スーパーオドム”に変身するのは数試合に1回。チーム内でコービー・ブライアント、パウ・ガソルに次いで3番手の立場でも不満もなく、それよりはチームメイトたちの気持ちを気にかける。

 まわりから批判されても堪えている風はない。毎日ケセラセラと生きているようにも見える。父が麻薬中毒、母を12歳のときに癌で失い、育ての親の祖母を6年前、生まれて半年の息子を3年前に亡くすなどの悲しい経験をしている彼にとって、感情に流されないことが毎日生きていくための術なのかもしれない。

「自分の人生において簡単なことは何ひとつなかった」とオドムは言う。それだけに、たとえ今幸せでも長く続かないのではないかと悲観的になるという。貪欲に欲しいものを求めることもない。

レイカーズ優勝の原動力となった“スーパーオドム”。

 そんなオドムが、今、本気で優勝したいと思っている。「家族や友人、共に育ってきた人たちにとっても優勝は大きな意味を持っている。だからこそ優勝したい」と、彼らしい理由だ。

 そんな気持ちがあふれ出たからか、NBAファイナルでは1戦目から“スーパーオドム”の活躍。その甲斐あってレイカーズは6月14日に優勝を決めた。

 チームメイトたちと喜びを分かちあった後、オドムは言った。

「ずっとこの日が来ると思っていた。『NBAチャンピオンだ』と言える日が来ると思っていた」

■関連リンク► カメロが追いかける“兄貴分”コービーのたどった道。 (2009年6月5日)
► コービーの言葉が招いた、レイカーズの精神的成長。 (2008年5月29日)

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