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冨田洋之が体感した新採点方式の難しさ。 

text by

藤山健二

藤山健二Kenji Fujiyama

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posted2006/11/09 00:00

 デンマークのオーフスで開催されていた世界体操選手権は、新採点方式になってから初めての国際大会として注目を集めた。結果は男子の団体、個人総合とも中国が優勝。日本勢は個人で冨田洋之が銀メダルを獲得したものの、アテネ五輪で金に輝いた団体はミスを連発して3位に終わり、残念ながら世界の頂点から滑り落ちてしまった。

 体操競技といえばこれまで10点満点が代名詞だったが、今回からは個々の技の難度を示す演技価値点と、技の出来具合によって10点満点から減点していく演技実施点の合計で競う方式に改められた。この新方式に対し、アテネで世界を制した日本は「規則が変わっても体操の本質は変わらない」(冨田)として、従来通りの「美しい演技」にこだわってきた。難度の高い技をたくさん並べるよりも、できることを確実にこなして減点を抑えようという日本の戦略に対し、ライバルの中国はひたすら難度の高い技の習得に努め、演技価値点をいかに高めるかの一点に絞って強化を進めてきた。たとえば個人総合で優勝した楊威と冨田の価値点の差は、最終的に6種目合計で0.8点もあった。鉄棒とゆかでは冨田の価値点の方が高かったが、つり輪では0.6点、跳馬にいたっては0.8点の差があった。アテネでともに戦った米田功と鹿島丈博が故障でメンバーから外れ、冨田一人に重圧がかかったのは事実だが、これでは最終的に1.225点の大差がついたのも当たり前で、冨田本人でさえ「たとえ自分が完璧な状態だったとしても、楊威の点数には届かなかった」と認めざるをえない“完敗”だった。

 ただ、最終的な目標が2年後の北京五輪だとすれば、今回の敗北は決してムダではない。金メダルこそ逃したものの、3大会連続でメダルを獲得した今の冨田の実力は、具志堅幸司監督が「安定感は世界一」と評したほど高い。これから中国のように難度を高めた演技構成を作り上げれば、確実性と美しさで上回る冨田の方が北京では有利になることは間違いない。他の選手も同様で、そうなれば団体戦でも十分に勝機はあるだろう。

 勝負はあくまでも2年後の北京。残された時間は決して長くはないが、今回の失敗を分析し、修正するだけの時間は十分にあるはずだ。

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