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2019年ラグビーW杯は日本に!
アジア初のホスト国の栄誉と宿題。 

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大友信彦

大友信彦Nobuhiko Otomo

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photograph byGetty Images

posted2009/07/30 11:50

2019年ラグビーW杯は日本に!アジア初のホスト国の栄誉と宿題。<Number Web> photograph by Getty Images

アジアでの開催はほぼ内定していたが、決定の報せに大畑大介(写真右)も安堵の表情を浮かべた

 7月28日、夜9時過ぎから、日本ラグビー協会の会議室に続々と記者が詰めかけた。2015年と2019年のワールドカップ開催国発表時間として当初伝えられた10時30分が過ぎ、11時も過ぎ……。

 そして11時35分、前方に設置されたスクリーンに、ダブリンのIRB理事会会場からのライブ映像が映し出された。150人を超えて膨れあがった各種メディアと協会関係者が、固唾を飲んで見つめる。

「以下の決定をお知らせします。2015年はイングランド。2019年は日本」

 IRBのベルナール・ラパセ会長の言葉が届くと同時に、会見場は大きな拍手に包まれた。

「ヨシッ」「やったぁ」

 フラッシュの火花が散る中、森喜朗・ラグビー協会会長と大畑大介・トップリーグキャプテン会議代表が力強く握手を交わす。

「ラグビーという素晴らしいスポーツを世界に広めるため努力をしたいという日本のメッセージが、IRB理事の皆さんの賛同を得た。世界のラグビーが新しい一歩を踏み出した。これはラグビーにとって歴史的な日です」

 森会長は言葉を噛みしめるように言った。

W杯開催はラグビー人気復活の起爆剤になるが……。

 初めて招致を目指した4年前は、伝統国の厚い壁に撥ね返された。再挑戦した今回は、「TENDER FOR ASIA(アジアのための招致)」というテーマを前面に掲げ、香港とシンガポールでも試合を行なう計画を作成。2007年フランス大会で事務局長を務めたクロード・アチェ氏を招致アドバイザーに迎え、「世界人口の6割を擁するアジアはラグビーにとって新たな市場になる」と、実利面もしたたかにアピールしたことが、五輪種目採用を目指すIRB首脳の思惑とも一致した。

「子どもの頃、第1回のラグビーワールドカップをテレビで見たときは、こんな凄い大会が日本でできるなんて夢にも思わなかった。自分も10何年の間、桜のジャージーを着てやってきたことが少なからず力になったと自負しているし、とにかくむちゃむちゃ嬉しいです」

 選手代表として登壇した大畑はそう言いながら、「ワールドカップはラグビー人気復活の起爆剤にもなるけれど、どっちへ転ぶか分からない。代表を強くしなきゃいけない。今日は喜んでいいけど、明日からは1日も無駄にできない」と唇を結んだ。

外国人選手頼みの代表チームでは日本開催の意味がない。

 日本は過去6度のワールドカップすべてに出場しているが、勝利は1991年大会でジンバブエを破った1勝のみ。過去のホスト国はすべてが1次リーグを突破しており、日本協会首脳も「2019年には世界のトップ8」をノルマに掲げるが、道のりは険しい。

 ニュージーランド人選手を大量に起用したジョン・カーワン日本代表ヘッドコーチのもと、日本代表の世界ランクは現在14位。「まず勝つことが大事」とカーワンは外国人重用の理由を説明するが、「アジアへの普及」「五輪採用」の大義を掲げてワールドカップを招致しながら、代表には傭兵ばかりというダブルスタンダードは、ファンの理解を得られまい。

 トップリーグで活躍する日本人のトップ選手を選考から外す際にカーワンが口にする「ゲームマネジメント能力の欠如」が事実であっても、そこへ輸入選手をはめ込むだけでは、10年後への展望もファンの信頼も見えてこない。

【次ページ】 10年という時間は長いようで短い。若年世代の強化が急務だ。

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