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「記録」は途切れたが、評価を高めた金井晶聡。 

text by

前田衷

前田衷Makoto Maeda

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posted2005/02/03 00:00

 デビュー以来14連続KOと勢いに乗る“兵庫のタイソン”が王者・榎洋之に挑んだ8日の日本フェザー級タイトル戦。好カードに後楽園ホールは満員となり、試合も期待を裏切らず白熱の攻防が続いた。

 緊迫ムードを一層高めたのは、不敗同士の対決に加えて「記録」がかかっていたからである。挑戦者・金井晶聡がこの日倒せば、放送席に座る浜田剛史さん(元世界J・ウェルター級王者)が20年前に樹立した15連続KOの日本記録に並ぶはずだったのだ。

 世界的にはラマール・クラークの「44連続KO」というとてつもない数字が残っているが、今ではほとんど顧みられることがない。ローカルのスターによる“作られた記録”であることが定説になっているからだ。最多記録ではないが、ウィルフレド・ゴメスの36連続、ルーベン・オリバレスの26連続など、世界王者経験者の残した数字はそれなりに彼らが怪物王者であることを物語っている。

 日本の代表的KOキングの記録を顧みると藤猛(8連続)―ムサシ中野(12連続)―浜田(15連続)と、彼らにしては少ない気がするが、そもそもボクサーの究極の目的はチャンピオンであり、連続KOはその過程でたまたま生じた副産物に過ぎないのである。

 極端な話、記録を目的にすれば外国から“噛ませ”を呼んできて倒し続ければ何試合でも可能だろう。だがそれにも限度がある。特に地方で連続KOをマークする選手に対しては「本物か?」とコアなファンから疑われ、同業者の厳しい批評の目にもさらされる。

 今回“兵庫のタイソン”が潔かったのは「尊敬する浜田さんの記録に並ぶ試合はタイトルマッチでやりたい」と敢えてボクシングの聖地に乗り込んできたことだ。結果は、初回に右クロスで榎を脅かしたのが唯一記録に接近した場面で、後はチャンピオンの巧みな左ジャブに主導権を握られ、右目が腫れ塞がり、強打にモノを言わすことはできなかった。7回でストップがかかり、金井は「相手が一枚も二枚も上だった」と完敗を認めざるを得なかった。しかし記録こそ潰えたものの関係者の間ではかえって評価を高める結果になった。「危うく踏み台にされるところだった」と苦笑した勝者。金井の奮闘のおかげで榎の潜在的な力も引き出され、榎にとってもベスト・バウトになったと思えるのである。

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