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スーパースターは何故、
殿堂入りを嫌がったのか。
――M・ジョーダン復帰の可能性。 

text by

宮地陽子

宮地陽子Yoko Miyaji

PROFILE

photograph byNBAE/Getty Images

posted2009/05/13 06:00

 そういえば、現役時代のマイケル・ジョーダンを取材していた頃は、いつも予期しない言動に驚かされていたものだった。コート上での超人的なプレーはもちろんのこと、オフコートでもジョーダンの思考回路は時に凡人の想像を超えていて、それが新鮮だった。

 そんなことを思い出したのは、先日、今年バスケットボール殿堂入りする選手とコーチが発表になり、選ばれたジョーダンから久しぶりに彼らしいコメントを聞いたからだった。

本心から殿堂入りを嫌がるジョーダンの理由。

 殿堂入りの感想を聞かれたジョーダンは「自分にとっては全然楽しいことではない。この場にいるのも嫌だ」と言ったのだ。ほかの殿堂入り選手やコーチが型通りの感想を口にするなか、ジョーダンのこの発言には驚かされた。もちろん、ジョーダンには彼なりの理由があった。

「殿堂入りするということは、選手としてのキャリアが完全に終わったということだ。もうユニフォームを着ることはできない。自分はそう理解している」

 つまり、自分の現役が終わったと宣告されるようで嫌だというのだ。これが6年近く前に引退した人の言葉だろうか。

 ジョーダンは3度引退し、2回現役復帰している。2度目の引退のときには、復帰しない可能性を99%と言い、「でも残りの1%は君たちのものではなく僕のものだ」と主張していた。

 そんなジョーダンも、殿堂入りによって自分の手の中にあった1%を手放さなくてはいけないと覚悟を決めた。決して殿堂を軽く見ているわけではない。むしろ殿堂入りの意味の大きさを理解しているからこそ、そう感じるのだろう。

復帰する可能性を常に持っていたいスーパースター。

「実際に復帰するのかって? そうではない。でも、人にはできると思わせていたい」とジョーダン。想像を超えた負けず嫌いな性格は相変わらずだ。普通の負けず嫌いなら、引退後、資格を得たら一日も早く殿堂入りしたいと思うのだろうが、何しろ、普通ではないのだ。

「もちろん殿堂入りはすばらしいこと。断るつもりはない。でもこんなに早く殿堂入りしたくはなかった。70歳、80歳になってからならよかったのに」

 今のNBAにも才能あふれ、魅力ある選手たちは大勢いる。しかし、やはりジョーダンはジョーダン、唯一無二の存在だと思うのだった。

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