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不器用さゆえすぐに決まらなかった
アレン・アイバーソンの移籍先。 

text by

宮地陽子

宮地陽子Yoko Miyaji

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photograph byNBAE/Getty Images

posted2009/09/29 06:00

不器用さゆえすぐに決まらなかったアレン・アイバーソンの移籍先。<Number Web> photograph by NBAE/Getty Images

“NBA最速の男”もすでに34歳。昨季は背中の痛みのため4月上旬から残り試合を欠場

 つくづく思うのだが、アレン・アイバーソンは不器用な選手だ。

 元リーグMVPで、オールスターに10回選ばれ、4度の得点王を取ったスーパースターを「不器用」と表するのは変かもしれない。実際、能力やスキルの面ではまったく不器用ではない。そうでなければ、183cm、81kgの小さい身体であの実績をあげられるはずもない。

 その一方で、頑固で融通が利かない一面を持っている。いつも「自分らしい」ことにこだわり、自分のやり方を変えようとしない。そのため幾度となく周囲と衝突してきた。そして、プロ13年目にして初めてFAになったこの夏、そんな彼の不器用さが先の道を狭めてしまった。

 去年11月にデトロイト・ピストンズにトレードになった頃、アイバーソンは、個人成績よりも優勝が最優先だと言っていた。ところが、実際にシーズンが進むにつれ起用法に対する不満を漏らすようになり、故障もあって、最後はチームから離れてシーズンを終えた。

「優勝第一」と「自分らしさを保つ」ことの狭間で悩む。

 当初の「優勝第一」という姿勢も決して偽りではなかったのだろう。ただし、それより前に、彼には「自分らしさを保つ」という絶対条件があった。たとえば、裏方にまわり、脇役に徹することはアイバーソンにとっては自分らしいことではなかった。持ち味を生かすように起用してもらえないのなら引退したほうがいいとまで言っていた。

 もしピストンズで少ない出場時間でも文句を言わずにチームプレイに徹していたら、この夏、強豪チームが本気で獲得に乗り出したかもしれない。しかし、あくまで「自分らしさ」にこだわった。その結果、9月に入ってもすぐにはアイバーソンの行き先は決まらなかった。契約先として噂されるのは優勝とはほど遠いチームばかりで、オファーされた契約金もリーグ平均を下回った。

 そんな彼を哀れに思う人もいるかもしれない。しかし、これまで「自分らしさ」にこだわったからこそ頂点にまで登りつめたアイバーソンにとって、自分らしさを捨てることほど惨めなことはないのだ。

結局メンフィス・グリズリーズとの1年契約になってしまう。

 9月、結局、アイバーソンはメンフィス・グリズリーズと1年契約で合意した。若くて才能のある選手は揃っているものの、昨シーズン24勝58敗の、プレイオフにもほど遠いチームだ。他のチームからは正式なオファーがなかったという。最後には、グリズリーズなら自分を選手としてありのままで受け止めてくれそうだと信じ、アイバーソンは契約を決意した。

 今から13年前、アイバーソンはドラフト1位指名でNBAに入ったが、サイズ不足やプレースタイル、言動など、多くのことで批判を受けていた。それでも、あくまで自分の道を貫きながら、コート上で結果を出すことで批判の声を静めてきた。今アイバーソンは、そのルーキーシーズンを思い出して、新シーズンに挑むという。

「今年は自分にとって自己証明の年だ。ルーキーのシーズンをもう一度やるようなものだ」

 果たして34歳のアイバーソンは再び周りの批判を静めることができるのだろうか。

■関連コラム► デビュー14年目の新境地。アイバーソンの最終目標は? (2009年1月29日)
► 個性派の2人が見せる、ベテランの誇りと情熱。 (2006年12月7日)

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