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2019年W杯を見据えて
試練に挑む若者たち。
~底上げ進む日本ラグビー界~ 

text by

大友信彦

大友信彦Nobuhiko Otomo

PROFILE

photograph byNobuhiko Otomo

posted2011/04/04 06:00

日本人の低さを活かすトレーニングも徹底された。股をくぐり布巻(右)へパスを出す竹中

日本人の低さを活かすトレーニングも徹底された。股をくぐり布巻(右)へパスを出す竹中

「こういうことはあるんだ! 集中しろ!」

 心を鬼にして言ったのだろう。3月11日午後。強い地震に見舞われた茨城県龍ヶ崎市の流通経済大グラウンドでは、U-20日本代表と高校日本代表の合同練習が行なわれていた。照明塔が大きく揺れ、クラブハウスは激しく軋んだ。揺れが収まったとき、人工芝の隙間からは泥水が噴き出し、地割れができていた。隣の建物は窓ガラスが割れていた。

 そんな状況でも、ふたつの若手代表チームは練習を再開した。不安げな表情を見せる若い選手たちを、コーチのひとりは、あえて厳しい言葉で叱咤したのだ。

 災害の規模がまだ分からないゆえの言葉でもあったろう。違和感は覚えなかった。ピッチには、阪神大震災を経験した選手やスタッフも大勢いた。大きな余震も再三襲ってきた。誰もが不安と心の痛みを圧し殺し、ボールを追っていた。

 それだけの思いを込めた合宿だった。

逸材が揃う現在の高3世代は2019年W杯で27歳に。

 高校日本代表は3月14日からU-18スコットランド代表などと4試合を行なう英国遠征に出発。U-20日本代表も4月8日からスコットランドに遠征。5月末からグルジアで開かれるジュニアワールドトロフィー(JWT)に向けた強化試合2試合を戦う。高校日本代表とU-20の両方に選ばれている布巻峻介(東福岡)は、JWT本大会にも選ばれれば3カ月で3度も日本とヨーロッパを往復し、最大10試合に臨むことになる。

「まだ選ばれるかどうか分かりません」。

 地震の前、布巻は謙虚な姿勢を崩さずに言い「でも、ここで結果を出さないと、先に続かないですから」と続けた。

 日本でラグビーに携わる者共通の大目標が、2019年に日本で開催されるW杯だ。布巻や竹中祥(桐蔭学園)ら逸材が揃う現在の高校3年生は27歳になる。

「2019年に世界を相手に結果を出すには、今からスコットランドのような相手に勝っておかないと」。布巻だけでなく、高校日本代表の松井英幸監督も、U-20の元木由記雄HCも、まったく同じ言葉を口にした。「もちろん簡単なことじゃない。でも選手たちは、自分たちの立場を自覚しています」(松井監督)

 長く厳しい道のりは覚悟の上だ。東北では、人々が千年に一度という大難に立ち向かっている。不可能なはずがない。

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