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相次ぐ代表選手の逮捕。その根底にあるものとは。 

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大友信彦

大友信彦Nobuhiko Otomo

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posted2005/06/09 00:00

 もう何が起きても驚かない。ラグビー担当記者はもはやそんな心境だ。

 5月9日未明に未成年の日本代表選手が六本木で通行人の女子プロレスラーを殴り逮捕。1週間後の17日未明には同じ六本木で24歳の日本代表選手が飲食店員を殴り逮捕。こちらは容疑を否認しているが、代表合宿中の午前2時半に繁華街で飲酒の末のトラブルである。ニワトリだってもう少し学習能力があるだろう。

 だが本当に驚かされたのは、20日に発表された日本協会の処分だった。暴行した選手の出場停止は日本代表に関してのみ。勝田隆強化委員長と浜本剛志強化担当理事は「譴責」、萩本光威監督は協会規定で最も軽い「警告」。この決定時点で既に2つ目の事件発覚から3日、最初の事件発覚からは12日が経過していた。否認選手の所属する三洋電機が事件2日後に部長の辞任、チームと選手の活動停止を決めた素早さとは対照的だ。

 「それにしても」と誰もが思うはずだ。なぜここまで不祥事が続くのか。

 日本代表は、昨年10月にもフィットネスコーチが六本木の飲食店で店員に暴行を働き逮捕されている。勝田氏は進退伺を出したが、真下昇専務理事は「欧州遠征への出発直前でもある」と受理せず。その遠征では記録的な惨敗を重ねたが、スコットランド戦後に「私は辞表を胸に戦っている」と言った萩本監督は帰国後「あれは冗談」と前言撤回。日本協会理事会は大敗の原因をマネジメントの不備に求め「総務の専門家を有給スタッフとして迎える」(浜本理事)との結論を出すが、そのポストに収まったのはスペシャリストとは呼び難い、勝田委員長の教え子。さらに日本代表の監督像を討議するはずの「世界8強進出対策会議」で監督交代論を口にした向井昭吾、春口廣、清宮克幸の各委員は解任され、新しい座長には勝田氏の母校、筑波大の河野一郎氏が就いた。

 スポーツで最も厳粛な「結果」に誰も責任を負わず、再建を名目にかくも露骨な人事が横行する団体で、18歳や24歳の選手に自覚ある行動を望めるだろうか。ピッチの外では2月、レフェリーの朝日新聞広告ロゴを巡るドタバタもあったが、やはり誰も責任をとらなかった。2011年W杯招致という錦の御旗の下、事を荒立てまいとする姿勢がラグビーの地位を絶望的に貶めている。監督責任で警告を受けた感想を聞かれた萩本監督は「その件には答えたくない。スーパー杯の間はノーコメントと協会が決めた」と逃げたが、真下、日比野弘両氏に確認すると、そんな事実はなかったのだ……。

 協会が処分を発表した20日の会見で、真下専務理事は「ある時期が終わった暁には、ドラスティックに新体制を指向して改革を図る」と話した。この6月、日比野会長代行は定年で任期を終える。そこから新体制へ穏便に移行するシナリオか?

 遅い。そこには協会の都合のみがあり、被害者やファンへの視線は皆無。この体質のままW杯招致が実現しても、ろくな運営ができないのは確実だ。そして「ホームで戦う以上必ず勝つ」と箕内拓郎主将が今季の標的に据えているアイルランドとの2試合も意味を失う。6月末に新体制が発足したとしても、ファンに新しい姿を見せる機会は遥か先。生まれ変わった組織で世界の強豪と戦ってこそ、再建の第一歩を刻める。

 サッカーでもフランスW杯への途上、加茂周監督を解任するまでには大曲折があった。だがそれを断行した先に現在の隆盛がある。膿を出すラストチャンスを逃してはならない。

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