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センバツの主役・中田は清原の後継者になれるか? 

text by

小関順二

小関順二Junji Koseki

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posted2007/04/19 00:00

 センバツ大会は大方の予測を裏切る常葉菊川高(静岡)の優勝で幕を閉じた。準優勝の大垣日大高(岐阜)も希望枠選出の初出場校で、決勝まで勝ち進むとはほとんどの人が思わなかった。

 予想外の展開に沸いたセンバツ大会。その中で、当然のようにホームランをかっ飛ばしたのが中田翔(大阪桐蔭高・投手&外野手)だった。3月28日の佐野日大高戦、中田は'92年の松井秀喜(星稜高)以来となる2打席連続ホームランを、左翼と左中間スタンドに叩き込むのである。

 今センバツの使用球は、いわゆる飛ばないボール。コルク芯をゴム素材で覆うことによって、反発力が下がり、飛距離は従来にくらべ1.2メートルほど抑えられると言われていた。実際、大会通算本塁打は昨年の14本から10本に、三塁打は22本から19本に、二塁打は86本から81本に減り、飛ばない効果が実証されている。しかし、この程度の変化では中田のパワーはビクともしなかった。

 高校通算74本目は、ライナーで左中間に飛び込むミサイルのようなホームラン。相手ショートのエラーのあとの一発は、対戦投手のわずかに残っていた緊張感を完璧に断ち切ったと言っていいだろう。

 翌日のスポーツ紙には清原和博(オリックス)の次のようなコメントが掲載され、目を引いた。

 「1、2本ともすごい飛距離で、一緒にフリー打撃で飛ばし合いたい気持ちになった。彼の場合は私の後継者になれる逸材だと思っている」

 中田伝説はそれ以降も続くと思われたが、準々決勝の常葉菊川高戦、中田は3打数0安打に抑えられ、1対2で敗れてしまう。ホームランを狙う気負いがアウトステップという悪癖になって現れ、好投手・田中健二朗の内角攻めに屈してしまうのだ。

 中田はもちろん、20年に1人という逸材だが、克服すべき悪癖を持つ“成長過程”でもある。昨年夏の甲子園では早稲田実の斎藤佑樹投手に3三振を喫したが、このときは露骨なアッパースイングがあり、内角高めに致命的な弱さを抱えていた。

 昨秋の近畿大会ではそれを修正して、市川高戦では推定170メートルという超特大ホームランを放つのだが、今大会では前述したアウトステップという悪癖に苦しんだ。まさに、正と邪が螺旋状に組み合わされ、交互に出現してしまう。それでも課題を克服するごとに中田のバッティングは迫力を増していくのである。

 ここで視点を変え、中田の希少価値に迫ってみたい。中田の価値とは“右打ち”だということである。

 今大会に登録された選手のうち、左打ちは何と224人(39.6パーセント)。20年前に行われた87年の選手権が157人(21.5パーセント)だから、左打ち選手の増加は明白だ。

 何故そうなるのか? 打者走者の一塁到達時間を調べると、左打者は右打者にくらべ0.2〜0.3秒速いことがわかる。この差を重視する指導者たちの合理的精神が“右投左打”の選手を多くつくり出しており、清原以降は右の強打者が登場していないのだ。中田という右のスラッガー誕生は、左打ち偏重の傾向に一石を投じたと言ってもいい。

 来るべき夏の大会には、どんな中田が待っているのだろうか。右ヒジ痛が癒えたMAX151キロの剛腕も見てみたいし、飛距離170メートルの大ホームランも見てみたい。そういう期待感を抱かせるのが中田の中田たる所以である。

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