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斎藤佑樹 急成長の秘密。 

text by

小関順二

小関順二Junji Koseki

PROFILE

posted2006/09/14 00:07

SPECIAL FEATURES

[徹底分析]斎藤佑樹 急成長の秘密。

小関順二=文

text by Junji Koseki

 早稲田実業の斎藤佑樹投手を初めて見たのは、昨年11月12日に行われた明治神宮大会の岐阜城北高戦だ。さらに2日後の14日に行われた準決勝、駒大苫小牧高戦を見て、『アマチュア野球』というムックに評価「B」を付けたことを覚えている。ちなみに、評価の高い順に「AA」は田中将大(駒大苫小牧高)、前田健太(PL学園)、「A」は大嶺祐太(八重山商工)、「BA」は増渕竜義(鷲宮高)などに付けた。

 「B」は低くはないが、高くもないという程度の評価。今なら文句なく「A」を付けるが、昨年秋の印象は「B」だった。即プロではなく早大進学という既定路線が、斎藤の印象から「凄み」を奪ったことは否めない。しかし、それ以上に、斎藤はまとまりすぎていたのだ。

 身長176cm、体重70kgの体格も、MAX143kmのストレートも、スライダー、カーブ、フォークボールをひと通り投げる小器用さも、安定したコントロールさえも、それらは東京っ子の粋ぶりを訴えるかのように、けっして突出しない。それが物足りなく思えたのだった。

 しかし、岐阜城北高戦のノートを見て、気づいたことがある。キャッチャー・白川英聖が縦のスライダーらしき球を3つ、後ろに逸らしているという事実。今春のセンバツ大会でも、延長15回引き分けになった関西高との2回戦で1つ、大敗した準々決勝の横浜高戦で2つ、ボールを後ろに逸らしているのだ。

 それが、夏の甲子園大会では一変する。捕逸はゼロで暴投も2つだけ。斎藤のワンバウンドになる変化球に対し、白川は身を挺して捕球しているのである。それが斎藤のピッチングを大きく変えた要因の1つといえるだろう。ワンバウンドになっても捕球してくれると思えば、腕の振りもおのずと変わってくるものだ。

 投球フォームが微妙に変わっていることも見逃せない。春までの斎藤の下半身の役割は、バランスを取るだけのものだった。上半身の姿勢が安定するように、腕の振りが波打たないように──そういうことを補完するために下半身があった。言い換えれば、ピッチングの主体になるのは上半身、とくに肩の動きが重要だった。

 だが夏になると、斎藤のピッチングの主体は下半身に移っていた。春までの彼は、腕の振りでテークバックを取り、腕の振りでボールを前に向かって投げていた。それが、ボールを放す直前まで、下半身の動きが上半身を導くようになったのだ。斎藤が肩を始動させるのは10コマの分解写真があれば最後の2コマくらいのところから。それくらい肩を使わなかった。

 春のセンバツ大会を思い返せば、3月29日に関西高との延長15回引き分けの激闘があり、翌30日には再試合を行い4対3の勝利。さらに翌31日に横浜高との準々決勝を行っている。その日斎藤は6イニングスを投げ、被安打8、失点6の大乱調で敗退。3対13の責任を1人で取る格好になってしまった。3連投は、肩を酷使する当時の斎藤に深刻なダメージを与えていたのである。

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