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卓球の歴史が変わろうとしている!
中国独走を止めた日本の育成法とは? 

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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photograph byKYODO/Jun Tsukida(AFLO SPORT)

posted2011/02/22 10:30

卓球の歴史が変わろうとしている!中国独走を止めた日本の育成法とは?<Number Web> photograph by KYODO/Jun Tsukida(AFLO SPORT)

山口県出身で大阪の高校に通う17歳の石川佳純と、東京都出身で青森の高校に通う18歳の森薗美咲。2011年1月の全日本では石川がシングルで初優勝し、森薗はベスト8まで進んだ

 2016年にリオデジャネイロで開かれるオリンピック。

「5年後、日本の有望種目はなんですか?」

 と聞かれたら、必ずこう答えるようにしている。

「卓球ですよ」

 特筆すべきは、現在の日本の卓球界は男女とも、国際競争力を持っているということだ。これは他のスポーツを見渡すと、珍しい。

 その思いを強くしたのは、昨年暮れ、スロバキアで行われた世界ジュニア選手権の女子団体で日本が初優勝を達成したからだ。

世界に衝撃を与えた、中国の牙城を崩す日本卓球界の躍進。

 世界ジュニア選手権は2003年から始まり、毎年開催されているが、2009年まで中国女子は団体、シングルス、ダブルスの3部門を7年間にわたり、すべて制覇してきた。「21冠」である。

 その王国に初めて風穴を開けたのが、日本なのである。

 本当ならもっと報道され、注目を集めてもいいなあ――とずっと思っていたので、一応、決勝のスコアを書き記しておく。

石川佳純   3-2  朱雨玲(ジュ・ユリン)
森薗美咲   1-3  顧玉●(グ・ユティン)
谷岡あゆか 3-2  易芳賢(イ・ファンジェン)
石川佳純   3-0  顧玉●(グ・ユティン)
※ ●=「女」へんに「亭」

 3対1。世界の卓球界では日本のこの勝利は大きな衝撃をもって受け止められたし、この優勝はリオデジャネイロ・オリンピックを見据えた時に、大きな一歩となるのは間違いないと確信する。

 今回の優勝メンバーの3人はすべて高校生。将来の日本を背負って立つ「ゴールデンエイジ」の世代である。

 石川佳純は2月23日で18歳になる高校3年生。ジュニア選手権のシングルスでは準優勝にも輝いている。先ごろ行われた全日本選手権の女子シングルスで優勝、高校生が女王に輝いたのは1988年度の佐藤利香以来、実に22年ぶりのことだった。

 2番手として登場した森薗美咲は、石川と同じく高校3年の18歳。石川と組んだ女子ダブルスでは銀メダルを獲得している。

 また、決勝で易に対して貴重な1勝をマークした谷岡あゆかは、16歳の高校1年生。この谷岡は「エリートアカデミー」に所属している。

【次ページ】 多様な強化システムが“卓球王国”日本の土台を作る。

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